交番襲撃、警官と拳銃守る手だて早急に


 大阪府吹田市の交番で巡査が刺され拳銃が奪われた事件で、大阪府警は職業不詳の男=東京都品川区=を逮捕し、所持していた拳銃を押収した。

 昨年から交番を襲撃する事件が相次いでいる。交番の警察官を守るとともに、拳銃の強奪を防ぐ手だてを早急に講じなければならない。

 巡査の胸を包丁で刺す

 男は交番北側の駐車場で、勤務中の巡査の胸などを包丁で突き刺して意識不明の重体とし、拳銃1丁を奪った。逮捕された時、拳銃には銃弾4発が残っており、1発が発射されていた。男は精神障害者保健福祉手帳を所持しており、「病気がひどくなったせい、周りの人がひどくなったせいだ」などと供述しているという。

 事件の直前に、公衆電話から男の声で「家に帰ると室内が荒らされていた」という虚偽の110番があり、交番の男性巡査部長と男性巡査長が、バイクで交番近くのアパートに急行。巡査も遅れて向かおうとしたところ、交番前で襲われたとみられている。

 地元住民が大きな不安を感じたのは当然だ。吹田市と隣接する箕面市は、図書館や公民館など全ての公共施設を臨時休館し、豊中市は主催するイベントを中止した。

 大阪は、20カ国・地域(G20)首脳会議を今月末に控えている。G20には37の国と機関が参加し、多くの要人が大阪市内のホテルに宿泊する予定だ。事件の衝撃は大きい。

 今回のように、交番や駐在所が襲撃される事件は全国で後を絶たない。富山市の交番では昨年6月、男性警部補(当時)が刺殺され、奪われた拳銃で警備員が射殺された。

 同9月には、仙台市の交番で男性巡査長(同)が大学生の男に刃物で刺され死亡した。警官は治安維持のために拳銃を所持しているが、拳銃を狙う者のターゲットになりやすいことは否めない。

 昨年4月現在、全国の交番は6260カ所、駐在所は6329カ所に上る。多くの交番の存在が日本の治安の良さにつながってきた。その交番が襲撃され、拳銃が奪われることは決して看過できない。

 警察も無策だったわけではない。警察庁は今年3月から、本人以外の角度からは拳銃が取り外せないように改良した新型の拳銃入れの導入を進めてきた。しかし、今回被害に遭った巡査にはまだ渡っていなかったという。導入を急ぐべきだ。

 さらに交番や駐在所では、侵入されにくいレイアウトへの変更や警備態勢の強化を進めていた。今回襲撃された交番でも裏側の出口のドアの窓ガラスに鉄板を付けたほか、防犯カメラを設置する予定だったという。地域の治安を維持するため、まずは交番が防御を強化することは理解できる。

 厳戒態勢でテロ防止を

 交番襲撃への対策を急ぐとともに、大阪ではG20開催に向けてテロ防止策も強化する必要がある。

 既に全国の警察からの応援部隊が大阪に到着している。厳戒態勢でテロを防がなければならない。