中国国防費 膨張政策許さぬ国際連携を


 中国の第13期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第4回会議が開幕し、今年の国防予算は前年比6・8%増の1兆3553億4300万元(約22兆6000億円)となることが分かった。前年以上の伸び率であり、覇権主義的な動きに拍車が掛かることが憂慮される。

前年の伸び率上回る

 国防予算の伸び率は予想されていた7%に届かなかったが、前年の伸び率(6・6%)を上回った。額は日本の2021年度防衛予算案(5兆3422億円)の4倍強に達し、米国に次ぐ世界2位の規模だ。中国の国防費は海外から調達する兵器の費用や研究開発費が含まれていないため、実際は公表額を大きく上回っている。

 中国では3隻目の空母が年内にも進水する。この空母には、艦載機を効率的に射出する最新装置の電磁カタパルトが初めて導入されるという。「空母キラー」と呼ばれる東風21Dや、米軍基地があるグアムを射程に収める東風26などミサイルの配備数を増やしているほか、核戦力も増強するなど、その脅威は高まっている。

 17年の共産党大会では、35年までに軍の現代化を実現し、今世紀半ばに「世界一流の軍隊」とする目標を設定。李克強首相は今回の全人代の政府活動報告で、軍創設100年となる27年に合わせた「奮闘目標」に言及し、軍事力の強化を図ると語った。沖縄県・尖閣諸島をめぐって中国と対立する日本は、十分に警戒する必要がある。

 中国で昨年12月に成立した改正国防法では、中国の主権や安全などが脅かされた場合、国家は全国総動員を行うと規定されている。今年2月には、中国海警局の武器使用権限を明記した海警法が施行された。尖閣周辺では、中国海警船による領海侵入が常態化している。

 さらなる軍事力強化で、こうした挑発がエスカレートする恐れもある。日本は尖閣の実効支配強化や、平時と有事の間のグレーゾーン事態に対応するための法整備などを急ぐべきだ。

 中国の習近平国家主席は台湾統一に向け、武力行使も辞さない強硬方針を示している。国防費は台湾の約16倍に達し、台湾への圧力は一層強まろう。南シナ海の軍事拠点化も加速するに違いない。こうした膨張政策を容認することはできない。

 米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官が今月来日し、菅義偉首相と会談するほか、茂木敏充外相、岸信夫防衛相との日米安全保障協議委員会(2プラス2)に臨む予定だ。日本は米国との同盟を強化し、地域の安定と繁栄のために尽力する必要がある。日米やオーストラリア、インドを中心とする「自由で開かれたインド太平洋」構想も着実に推進すべきだ。

日本は防衛費の大幅増を

 日本の防衛費は国内総生産(GDP)比1%程度にすぎないが、米国のトランプ前政権時の昨年9月、当時のエスパー国防長官は日本を含む全同盟国に防衛費をGDP比2%以上に引き上げるよう求めた。

 国力にふさわしい役割を国際社会で果たしていくためにも、政府には防衛費の大幅増を検討することが求められる。