コロナ流行起源 昨夏説含め独立検証を進めよ
中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染について、米ハーバード大学医学大学院は昨年8月から広がっていた可能性があるとの調査結果を発表した。中国は直ちに否定したが、むしろ今後の防疫に資するため積極的に起源解明に努めるべきではないのか。
8月から病院の患者急増
調査は衛星写真とインターネット検索を分析したもので、武漢の主要病院の駐車場で車の数が前年に比べて8月から多くなり、特に9月から10月にかけて増加幅が67%、90%など急な伸びを示した病院があるとともに、同じ時期に中国のネット検索サイト百度(バイドゥ)で新型コロナ感染の症状でもある「せき」や「下痢」の検索が増えたと報告している。
調査結果について専門家による査読は行われておらず、調査を主導したジョン・ブラウンスタイン教授も「状況証拠」との認識だが、感染が8月から広がり、10月には社会的混乱が武漢で起きていたという見解を提起した。
問題は、このような可能性を指摘された中国側が即座に否定したことだ。中国は武漢の病院を訪れる患者が増加し、季節性のインフルエンザが流行する時期ではない8月以降に、せきや下痢のネット検索が増えたことについて最も正確な情報を把握して説明できるはずだ。
しかし、同大の調査論文を米メディアが8日に報じると、9日には中国外務省の華春瑩報道局長が「交通量だけを基にこうした結論を出すのは荒唐無稽だ」と述べ、ばかげた陰謀論として批判した。自国の感染症予防に真摯(しんし)に取り組むためにも、無視していい調査結果ではないはずだ。
もっとも新型コロナの発生源の調査に対して中国は消極的で、世界保健機関(WHO)の専門家チームを受け入れたのは2月下旬になってからだった。昨年12月1日に最初の感染者が確認され、発生源について中国は当初、武漢市の海鮮市場としていたが、欧米の専門家から海鮮市場に出入りしていない人の感染が指摘されるなど、同12月より前に発生していた可能性が高いとされている。
726万人以上の感染者、41万人以上の死者を出している世界的流行(パンデミック)をもたらした新型コロナだけに、起源解明に世界の関心が集中するのは当然だ。WHOは緊急事態宣言、リスク評価、パンデミック宣言とも後手に回り、中国との癒着が疑われ、年次総会で同ウイルスの起源について独立検証作業を求める決議が全会一致で採択された。
これには中国もWHOも協力を表明している。今日、ウイルスが、社会的距離、テレワーク、マスク着用など人々の生活を変え、社会的変容が世界的に起きるほどの影響を与えている時代に遭遇しており、起源解明とワクチン開発などその克服は人類的な緊急課題だ。
状況証拠を無視するな
ハーバード大の調査結果による状況証拠は一蹴されるものではなく、中国の現地で検証されなければならない。総会決議の独立検証作業を推進する一助とすべきだろう。