槇原容疑者逮捕 芸能界の体質が問われる


 「今後、絶対にこのようなことを起こさないことを固くお約束します」――。

 20年前の薬物事件の判決公判後、こう誓っていたシンガー・ソングライターの槇原敬之容疑者が再び逮捕されたことは、一度薬物に手を染めると、そこから抜け出すことがいかに難しいかを物語っている。

 社会に大きな影響及ぼす

 昨年11月には、元タレントの田代まさし被告が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕されたが、同被告の薬物絡みでの逮捕は5回目だった。薬物乱用で予防に勝る対策はない。逮捕者が相次ぐ芸能界は、歌手やタレントらに対する乱用防止講習を徹底して行うべきである。

 槇原容疑者は1999年、自宅マンションに覚せい剤を所持していたとして逮捕され、懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決が言い渡された。今回、覚せい剤などを所持した疑いで逮捕されるきっかけとなったのは、1度目の事件で一緒に逮捕された男性が2年前に逮捕されたことだった。

 この男性が自宅にあった覚せい剤について「それはマッキー(槇原容疑者)の」と語ったという。2人は同性パートナーとして同居する関係だった。槇原容疑者は「長いこと薬はやっていない」と供述しているというが、裏を返せば、最初の逮捕後、完全には薬物を断っていなかったのだ。

 一緒に薬物事件を起こした人間同士が同居していては、薬物と縁を切るのは難しい。逮捕容疑には、覚せい剤所持のほかに、指定薬物の通称「ラッシュ」所持もある。これは性的興奮を高める作用がある危険ドラッグだ。同容疑者の薬物乱用に気付きながらも、それを黙認していた音楽関係者がいたとすれば、業界の体質も問われよう。

 芸能人による薬物事件は、社会に大きな影響を及ぼす。薬物に対する好奇心が煽(あお)られ、手を染める若者が出てこないとも限らない。この点、事件を報道するメディアにも注意が必要だ。

 槇原容疑者の場合、自身が1度目の有罪判決後に作詞作曲し、アイドルグループSMAPに提供した「世界に一つだけの花」は音楽の教科書だけでなく、小学校の道徳の教科書にも採用されており、教育現場への影響も懸念される。

 芸能人が事件を起こせば当然、テレビ番組にも影響を及ぼす。昨年、NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」に出演していたピエール瀧氏は麻薬取締法違反容疑で逮捕され、降板した。昨秋には、今年の大河ドラマ「麒麟がくる」で帰蝶(濃姫)役で出演予定だった沢尻エリカ氏が同法違反容疑で逮捕されている。この事件では、代役を立てて撮り直したため、放送開始が遅れるという混乱もあった。

 薬物検査を出演条件に

 こうしたことから、NHKは4月以降に放送する番組のレギュラー出演者に対し、違法薬物の使用・所持などがないことを書面で確認する方針だ。しかし、これだけで芸能人の薬物乱用を撲滅できるとは思えない。薬物検査を番組出演の条件にするぐらいの思い切った手を打つべきだろう。