新型ウイルス 国民的協力で拡大抑えよう
新型コロナウイルスの感染確認が国内で相次いでいることを受け、政府は感染症対策の専門家会議を開き、今後取るべき対応策などが発表された。迅速で適切な対応と国民的な協力で、感染拡大を抑える必要がある。
専門家会議「発生の早期」
東京都や北海道など感染経路が特定できない症例が出ているが、専門家会議では、流行期には入っておらず、「国内発生の早期段階」との認識が示された。一方、加藤勝信厚生労働相は「患者増加の局面を想定した対策を今から取っていくことが必要」と指摘し、本格的流行への備えを強調した。
今のところ、感染経路がおおよそ把握できており、流行という状況にはないが、感染が拡大するか、抑え込めるかは、今後の対応いかんに懸かっている。
政府の対策本部も開かれ、安倍晋三首相は「各地の自治体と連携して検査態勢を大幅に強化するとともに、治療、相談態勢の拡充、強化に全力を挙げる」ことを表明。受診が可能な医療機関を現在の726カ所から800カ所に拡大すること、全国536カ所に設置した相談センターを土日を含め24時間対応とすることなどを決めた。
専門家会議では、高齢者や、糖尿病、心臓病の人、人工透析をしている人など重症化しやすい患者への対応に重点が置かれた。感染が拡大した場合、医療機関や保健所に患者が殺到し、重症化しやすい患者の受診が後回しにされるようなことがあってはならない。
厚労省は、発熱などの症状が出た際の対応の目安を公表。37・5度以上の発熱が4日以上続くか、強いだるさなどがある場合、保健所などにある「帰国者・接触者相談センター」に連絡すべきだとしている。
厚労省は新型コロナウイルスの特徴について、感染は飛沫(ひまつ)感染と接触感染によること、無症状の病原体保有者がおり、無症状でも感染することなどを挙げている。
世界保健機関(WHO)によると、重症化したり死亡したりするリスクは、2002~03年に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の約10%よりも低い。必要以上に恐れることはないが、潜伏期間中にも感染が拡大するところが厄介だ。
基本的には、濃厚接触がなければ感染は起こらないとされている。自分が感染しないため、そして感染を拡大させないために一人一人が外出後の頻繁な手洗いなどを励行していく時だ。
専門家会議では、感染の広がりを止めるため、なるべく人混みを避けたり、不要不急の外出を控えたりするなどの取り組みを求めた。テレワークの活用なども進めるべきだろう。
天皇誕生日の一般参賀をはじめ人が多く集まる行事の中止も相次いでいるが、感染拡大を阻止するためにはやむを得ない。
五輪にも影響しかねない
新型ウイルスは経済活動にも影響を与えてきている。感染の拡大を許し、本格的な流行となれば、東京五輪・パラリンピックの開催にも影響しかねない。いま感染拡大を抑えることができるかどうかの正念場にあることを全国民が自覚し、国民的な協力で拡大を防いでいきたい。