GDPマイナス 景気後退入りが不可避に
マイナス成長は予想していたが、これほどとは――。内閣府が発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値が、実質で前期比1・6%減、年率換算では6・3%減になったことである。
20年1~3月期も新型肺炎の感染拡大の影響は必至で、2四半期連続のマイナス成長すなわち景気後退入りが現実味を帯びてきた。要警戒である。
増税で個人消費落ち込む
マイナスの主因は、GDPの6割近くを占める個人消費の落ち込みである。昨年10月の消費税増税に伴う駆け込み需要の反動減が自動車や家電など幅広く出たほか、暖冬の影響で冬物衣料も振るわなかった。
政府は前回14年4月の消費税増税以後、消費低迷が長引いた反省から、今回は食料品などで税率を据え置く軽減税率を導入し、また、キャッシュレス決済でのポイント還元制度など2兆円規模の景気対策を実施したが、補い切れなかった。
昨年10月の増税について、本紙は日本経済に力強さがなく、また米中貿易摩擦の影響から世界経済が陰りの様相を見せるなど時期や環境の悪さから、実施に慎重さを求めてきた。
今回のマイナス成長には台風や暖冬という不運な要素もあるが、大半は政府自らが招いた結果である。会見で西村康稔経済財政担当相は「本来であれば緩やかな回復が続くはずだった」と述べたが、担当大臣としては認識が甘過ぎよう。
懸念されるのは、今年1~3月期において未だ収束が見えない新型肺炎感染拡大の影響である。中国からの訪日客の減少や同国向け輸出の停滞、部品供給網(サプライチェーン)の寸断などが消費、生産活動への新たな下押し要因になり、2四半期連続のマイナス成長が必至の情勢になりつつある。
戦後最長と言われる第2次安倍政権発足時からの景気拡大は当初こそ、デフレ脱却を目指した初期アベノミクス(大胆な金融緩和と積極的な財政政策)により好スタートを切ったが、2度の消費税増税により勢いを失い、もはや風前のともしび状態で経済の好循環を実現できぬまま終わりそうである。
軽減税率や景気対策により、前回増税後の14年4~6月期に比べて、個人消費(4・8%減↓2・9%減)や住宅投資(9・1%減↓2・7%減)で落ち込み幅が縮小。公共投資(5・3%減↓1・1%増)ではプラス基調を維持した。
これは教訓が生きたと言えなくもないが、キャッシュレス決済に限ったポイント還元には消費刺激の面で検討の余地を残したと言える。
何より検討すべきは、経済を痛める消費税増税以外で財政健全化を図る方策を真剣に探ることである。
金利正常化の方途探れ
アベノミクスを支えた大規模金融緩和、ことに現在のマイナス金利は金融機関の経営を圧迫し、融資機能を損なうなど弊害も目立つ。経済活性化への妨げになっているのである。徐々に緩和政策の修正を図りながら、将来の利子所得増加を通じて消費増へつなげる金利正常化の方途を探るべきである。