シリア撤退と「新・米国の覇権」

 2018年12月19日に突如としてトランプ米大統領がシリアからの米軍2000人を撤退させると発表した。そしてトランプ大統領はアフガンからも1万4000人の米兵のうち7000人を撤退させる方針だという。

 これはトランプ氏の選挙中からの公約であった。トランプ氏は実は不法移民対策やインフラ整備等の国内問題に予算を多く使いたいのである。

 しかし、マティス国防長官が事実上シリアからの撤退に抗議して辞意を表明。後任には、シャナハン副長官が代行の形で就任した。彼は、宇宙軍創設と軍事予算を全て任されている。

 また、スミス下院軍事委員長は、巨大な軍事予算を組むことよりサイバー等の方面に予算を集中させるべきだと考えている。多くのシンクタンクも、米軍の世界での常時駐留や定期交代などが必要か見直す必要があると提言している。

 これは多額の軍事予算を使わずに“偉大な米国”を再建するというトランプ氏の考えに沿うものではないか?

 なお、FOXテレビなどが、シリアに正規軍の代わりに民間軍事会社を派遣することを提唱している。その方が安価かつ効果的にテロ勢力根絶ができるという。節約された予算でサイバー等の技術を発達させた方が効率的ではないか?

 こうして、①正規軍が打撃を与えた後の治安維持等には民間軍事会社を使う②正規軍の世界展開を効率的に行う③今後はサイバー戦等に重点を置く――など、どれも予算や人命のロスを少なくして米国の覇権を低下させない現代的な方法になる。この新しい覇権の中核が、ファーウェイ問題かもしれない。

 ファーウェイの第5世代移動通信システム(5G)ネットワークを駆使すれば、検索やネット通販などを通じて、多くの人々の個人情報を集め、また、システム上に超高度の人工知能(AI)を発達させることも可能だという。にもかかわらず、欧州8カ国がファーウェイの無線プロバイダーを受け入れ、12カ国が地元のプロバイダーと試験中だという。そこでトランプ大統領は近々、米国内でのファーウェイ製品の使用を一切禁止する大統領令を出すという情報もある。

 これはファーウェイに代わって米国の5Gシステムが世界の情報の流れを抑え、米国の監視下に置き、大幅な操作も可能にしてしまうことの布石ではないか? これと優れたサイバー技術が組み合わされば、今までより強力な世界覇権である。

 このシステムが物理的危険に晒(さら)されたら、正規軍が急行し、その後の治安維持は民間軍事会社が行う。正規軍の世界での展開に関しても、5G情報通信とサイバー戦の組み合わせも、国防総省のコンピューターの精密な計算で行う。予算も大量の正規軍を駆使するよりは掛からない。

 この「新・米国の覇権」を実現するために、シャナハンが選ばれたのではないか? 彼以外の人が国防長官になっても、この方針は変わらないのではないか? そうであれば日本は、5G情報通信、サイバーそして正規ないし民間の迅速に世界の裏側まで派遣できる軍隊をもって、「新・米国の覇権」のパートナーになる以外に生きる道はない。米国を離れて中国に付くことは、チベット化という破滅にしか繋(つな)がらないからである。