民進抱える希望の党 確固とした安保政策提示を
徒党であった民進党
かつて民主党が政権にあった頃、私は本欄に『徒党に堕する民主党』と題して卑見を述べたことがある。その中で憲政の神様と言われた尾崎行雄の衆議院における演説の一節を引いた。
「博徒が作るが如き、ただ自分達の利害、栄辱を考えて離合集散するところの徒党は何時でもできますが、国家の政治を担任していくべき政党はできない。現在のものが本当の政党であると考えるのは大間違いで、あれらは徒党であります。党議に縛られれば正邪曲直を問わず、良心を棄てて党議に服従し、大臣にでも任命せられれば欣喜雀躍するような連中が首領株になっておるのであります」と、徒党の類いに堕していては国政を担う政党政治は行えないことを憂慮した。
結論を言えば、民主党改め民進党は結局のところ徒党であったのだ。2年前のことを思い起こしてもらいたい。安全保障関連法を「戦争法」と呼んで党を挙げて反対したことを。そして民進党の次期衆院選政権公約の原案にも「安全保障関連法を白紙化する」ことが盛り込まれていた。ところが、その民進党が一夜にして解党し、結党間もない希望の党へ合流することになった。前原民進党代表は「名を捨てて実を取る」と言ったが、信までも捨ててしまっては御仕舞いである。
希望の党が民進党からの入党希望者に署名を求める「政策協定書」の中には「安保法制は憲法に則り適切に運用する。不断の見直しを行い現実的な安保政策を支持する」と明記されている。これに従った恥もなく義もない100人余が民進党から鞍替えして希望の党の公認候補となったのだ。
選挙目当てで節義廉恥を失った者をいくら数多く集めても、互いに信じ合える一念がなければ党そのものが成立しないことは自明の理である。希望の党は民進党の覆轍を踏むのであろうか。それこそ尾崎翁の言う徒党ではないのか。
北朝鮮情勢がますます緊迫している現在、特定秘密保護法や安全保障関連法を成立させておいたことによって、日米同盟は一層強固になり、抑止力の強化につながった。民進党が反対したこの二つの法律があって、初めて日米間における北朝鮮のミサイル対応がスムーズにできるようになったのである。
また共謀罪(テロ等準備罪)法は「第五列」(在日の北朝鮮工作員など)によるテロ攻撃から国民を守るために不可欠な法律であるのに、これも民進党は猛反対したことを付記しておかねばなるまい。
北の脅威真剣に考えよ
希望の党の綱領には「平和主義のもと、現実的な外交・安全保障政策を展開する」とだけ記されているが、具体的な外交・安保政策については不明である。
暴戻非道な北朝鮮の脅威に対して、日米同盟における日本の役割の拡大が求められており、今後、自衛隊と米軍の役割、任務や能力を見直し、情報収集や警戒監視能力の向上を図らねばならず、そのため政府は「防衛計画の大綱」の見直しや「中期防衛力整備計画」の策定の検討を開始することになっている。
これまで現実を見ずに何でも反対の民進党議員の多くを抱え込んだ希望の党は、こうした安保政策の具体的内容を公約として策定できるのであろうか。
米朝開戦となれば日本に北朝鮮の弾道ミサイルが飛来する。究極的には防衛政策の大転換となる「敵基地攻撃能力」の保有についても真剣に考えねばならない秋(とき)が来ているのだ。日本の平和と安全をどう守るのか。これが衆院選の大きな焦点となろう。
希望の党には徒らに徒党に堕することなきよう確固とした安保政策を提示してもらいたい。