沖縄慰霊の日、平和維持の誓いを新たに
沖縄県はきょう「慰霊の日」を迎え、糸満市摩文仁の平和祈念公園において「令和元年沖縄全戦没者追悼式」を開催する。第2次世界大戦末期の沖縄戦などで約20万人が犠牲になった。国民一人ひとりが哀悼の祈りを捧(ささ)げ、御霊を慰めるとともに、平和の尊さを再確認して平和維持のための誓いを新たにしたい。
全都道府県の犠牲者刻銘
今年は新しい元号「令和」の下で行われる初の追悼式となる。時代は進んでも、凄惨(せいさん)を極めた沖縄戦の記憶は今も若者に受け継がれている。朗読される小学生の詩「本当の幸せ」には、沖縄の自然の美しさに対比して、伝え聞いた戦争での苦しい体験が記されているが、「令和時代」になって「明日への希望を願う新しい時代が始まった」と前向きに捉えようともしている。
沖縄では、軍人のほか民間人が空襲やマラリア、学童疎開船への攻撃による沈没などで多数亡くなった。しかし、犠牲者は沖縄県民だけではない。「平和の礎(いしじ)」には、北海道の1万805人をはじめ、福岡、東京、兵庫、愛知など全都道府県7万7436人や米国などの外国人約1万4000人の名前が刻まれている。この「慰霊の日」は沖縄戦の組織的戦闘が終わった日として沖縄県が制定したものだが、他の都道府県や他の国にも関わりの深い日なのである。
平和を確保する上で不可欠なのは、わが国周辺の安全保障環境を正確に把握し、それに見合った抑止力を保持することだ。玉城デニー知事が就任後初めて読む「平和宣言」には、朝鮮半島で緊張緩和に向けた動きがあり相互理解が重要であることが盛り込まれているが、短絡的な見方である。北朝鮮は依然として日本全域を射程に収める弾道ミサイル数百発を実戦配備している。5月4日と9日にはミサイルを発射するなど緊張状態は続いている。
尖閣諸島周辺で領海侵犯している中国公船が「パトロール」しているから「故意に刺激するな」とした玉城知事の発言もおかしい。石垣市議会が「尖閣周辺海域は日本の領海ではないとの認識か」と抗議し、知事は撤回した。パトロールというのは中国側の言い分だ。中国は日本周辺の海空域における活動を活発化させ、尖閣諸島周辺では海軍艦艇が活動を恒常化させている。宮古海峡を経由した海軍艦艇や戦闘機、爆撃機の進出も急速に増加している。
中国の習近平国家主席は台湾を核心的利益の筆頭に挙げ、軍事的手段を含むあらゆる必要な手段を用いてでも台湾併合の意思を鮮明にしている。台湾有事は日本有事でもある。全長が1200㌔に及ぶ南西諸島を取り巻く安全保障環境はかつてないほど緊迫化しているのである。
日米同盟深化で抑止力を
玉城知事は米軍普天間基地の移設先の名護市辺野古沖で、埋め立て工事が続けられていることについて「民主主義の尊厳を損なう」と批判し、移設断念を求めている。しかし、住民が周辺に密集し世界で一番危険な基地と言われる普天間基地を辺野古沖に移設し、日米同盟を深化させていくことこそが平和維持のための抑止力増強につながるのである。