辺野古埋め立て「反対」は有権者の37%

勝者なき沖縄県民投票、足並み乱れた自民県連

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に伴う埋立ての賛否を問う沖縄県民投票が24日に行われ、3択のうち埋め立てに「反対」が有効投票数の72・15%の43万4273票だった。一方で、有権者の過半数が「反対」を投じなかったため、辺野古移設が「県民の総意」と主張することは難しくなった。県民投票に法的拘束力はない。(沖縄支局・豊田 剛)

宜野湾市民二分の懸念 松川市長

辺野古埋め立て「反対」は有権者の37%

県民投票の結果を受けて会見する玉城デニー知事=25日、沖縄県庁

 「私は知事に就任以来、これまでも、辺野古に新基地は造らせない、普天間飛行場の県外・国外移設に全力を尽くしてまいりました。県民投票での結果を受け、辺野古新基地建設阻止に改めて全身全霊を捧(ささ)げていくことを誓います」

 投票から日付をまたいだ深夜0時すぎ、玉城デニー知事は県庁で記者会見を開き、神妙な面持ちで文面を読み上げた。会見では、有権者の過半数が「反対」を投じなかった「民意」をどう捉えるかという質問に答えに窮する場面もあり、笑顔は一度も見せなかった。それでも、「反対」が全有権者の4分の1を超え、有効投票の72%に達したことから、日米両政府に結果を伝えるために必要な最低限の目標は達成したことになる。

 開票結果を受け、県民投票を推進した「オール沖縄」勢力は、万歳三唱の代わりに「頑張ろう」を三唱。革新系国会議員は「圧倒的な勝利」と手放しで喜んだ。

 昨年10月頃から県内メディアの話題を独占し続けた県民投票だったが、前回の県民投票と比較すると、革新系の「勝利」とは言い切れない側面がある。

 1996年9月8日、大田昌秀知事の下で行われた「日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票」の投票率は59・53%。そのうち89・09%に当たる48万2538人が基地整理縮小に「賛成」した。有権者総数の過半数に当たる54・32%が基地の整理縮小に賛成したことになる。

辺野古埋め立て「反対」は有権者の37%

住民監査請求について説明する平安座唯雄氏(右から2人目)=22日、沖縄県庁記者クラブ

 今回は、辺野古埋め立て「反対」が全有権者の37・65%にとどまった。さらに、ここ数年の沖縄県内の重要な選挙の投票率は約6割で、それよりも下回ったのだ。

 県が定めた県民投票条例では、3択のいずれか最も多い票が「投票資格者の総数の4分の1に達したときは、知事はその結果を尊重しなければならない」と定められている。玉城知事は早ければ3月1日に上京し、安倍首相に結果を伝える。米政府には「大使館を通じて結果とわれわれの意見を添えて伝える」と説明した。

 辺野古移設を容認する立場の自民党沖縄県連は県民投票の期間中、組織的な運動は控えた。「どちらでもない」を選択肢に加えることで実施に合意した結果、「県連の足並みが乱れてしまい、逆に反対派を勢いづかせてしまった」とある保守系県議は認める。

 宮﨑政久衆院議員はSNSで「約半数が投票に行かないという意思を表明した。埋め立てに諸手を挙げて賛成という県民はいない。普天間基地の危険性を前に『やむを得ない』思いがある」と分析した。

 宜野湾市の松川正則市長は、県民投票を行った結果、「普天間飛行場が固定化される不安が大きくなる」と述べ、「市民が二分されてしまった感じ」と批判した。宜野湾市民の安全な生活を守る会の平安座唯雄氏は、「基地はない方がいいという結果になるのは、保守系政治家の安全保障の説明努力が足りないのが原因」と批判。「本来なら普天間飛行場をどうしたらいいのかを問う住民投票を先にすべきだったのではなかったか」と話した。

 平安座氏は22日、予算執行が「違法かつ不当」として、県民投票に掛かった5億5千万円の予算返還を求める住民監査請求書を県当局に提出した。2016年12月の最高裁判決で辺野古埋め立ては適法と判断されたことを踏まえ、「県民投票に付す行為は民主主義の根幹である司法判断をないがしろにするもの」と指摘。その上で、県民投票実施に当たる県当局は中立ではなく、執行予算は不当と断じた。

 4月に衆院沖縄3区補欠選挙、夏には参院選が控えている。オール沖縄は県民投票の結果を「勝利」と位置付け、今後の選挙に向けたアピール材料とする方針。自民は県民投票と選挙を切り離し、経済や福祉の振興など県民生活の向上を訴える考えだ。


=「声なき声」知事はどう受け止める=

沖縄問題に詳しい評論家・篠原章氏

 玉城知事は今後、投票に行かなかった47%の声なき声と「賛成」と「どちらでもない」に投じた県民にどのように向き合っていくのか注目したい。

 県民投票条例の制定で4分の1という低い設定は適切だったのか。さらに、県政野党の自民党が「やむを得ない」と「どちらでもない」を含めた4択案を出したことが、最終的な3択に帰結させた。戦い方が間違っていた。

 沖縄には翁長雄志知事という圧倒的なリーダーがいなくなり、オール沖縄は司令塔が不在の状況。一方、自民も県民投票をめぐり県連会長が辞任し、誰も統率できずにいる。保革の対立は深まるばかりだ。

 辺野古の現行計画は最適とは思えず、辺野古埋め立て水域の軟弱地盤の解決は簡単にはいかない。政府は誠意ある対応を迫られる。(談)