辺野古埋め立て問う県民投票 県議会「3択」可決も自民割れる

普天間危険性除去には触れず 「どちらでもない」は棄権と同じ

 2月24日に投票される沖縄県名護市の辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票を巡り、同県議会は29日の臨時会で、選択肢を「賛成・反対・どちらでもない」の3択にする改正条例を賛成多数で可決した。ただ、不参加を表明した5市長の一部は県議会の全会一致を求めており、依然として事態は流動的だ。(沖縄支局・豊田 剛)

反対5市に抗議が殺到で与党に譲歩

辺野古埋め立て問う県民投票 県議会「3択」可決も自民割れる

県庁前に掲げられている県民投票の広告

 県民投票の実施まであと1カ月と迫っている中、沖縄、うるま、宜野湾、宮古島、石垣の5市が投票の実施を拒否していることを受け、県議会の会派の代表は県民投票の現状打開を話し合う代表者会議を開いた。結果、事務手続きに必要なタイムリミットぎりぎりで、3択案に全会派が合意に達した。

 自民は初め、修正案にも反対した。「新聞紙面でしか見ていない。あまりにも急ぎすぎていないか」。沖縄・自民会派長の島袋大県議は、辺野古埋め立ては「普天間飛行場の移設を伴う」ことを踏まえて、「やむを得ない・反対・どちらでもない」の3択にするよう提示した。

 与党の中では、「3択にしても5市が県民投票の実施に応じる担保がない」との考えが根強く、県民条例で決まった2択を変更する必要がないという意見が主流だったが、最後は自民党の照屋守之県連会長が会議に参加し、3択の議長案を受け入れた。だが、29日の本会議の採決では、賛成、反対、退席と、自民会派内で対応が割れた。

 玉城デニー知事は25日、県庁で記者会見を開き、全県開催に至ったことに感謝の意を述べた。5市については時期を遅らせての投票実施も可能だと説明した上で、開票は全県で同時に行うことも確認した。

 県民投票のあり方をめぐっては、考えが大きく三つに割れた。共産、社民など県政与党は県民投票条例で決まった2択は譲らなかった。沖縄県と県民投票発起母体は全県参加にするには3択も受け入れるという柔軟姿勢を取った。自民と公明は3択または4択とする条例の修正案を求めた。

辺野古埋め立て問う県民投票 県議会「3択」可決も自民割れる

松川正則宜野湾市長(左)に県民投票参加を求める元山仁士郎「『辺野古』県民投票の会」代表(中央)=7日、宜野湾市役所

 自民会派は、普天間飛行場(宜野湾市)の危険性除去という本質的議論が抜け落ちていることから、県民投票の実施そのものに懐疑的だった。同会派は22日、声明を発表し、条例の見直しを求めた。その中で、①全県実施に向けて仕切り直すこと②県議会で全会一致で可決すること③全市町村の理解が得られる協議をすること――を求めた。

 県議会が「3択案」で合意したことで、県や県民投票の母体は胸をなでおろしたが、保革両陣営の間では素直に歓迎されていないのが実態だ。辺野古のキャンプ・シュワブのゲート前で反基地活動を行う女性は、「署名が集まって決定したのが県民投票。県議会で決まった通り実施しないのは納得できない」と憤った。

 自民党支援者の間でも失望感が広がる。「賛成・反対・どちらでもない」の3択は事実上、2択と変わらず、「『どちらでもない』の評価は棄権と変わらない」(宜野湾市在住自民党員)からだ。

 県民投票は普天間飛行場の移設と完全に切り離されている。ある保守系の宜野湾市議は、「普天間飛行場の移設をどうするかという、在日米軍再編の原点に一切触れていない。辺野古移設が遅れれば、移設、すなわち、危険性除去が遅れることになる。到底容認できない」と不満を隠せない。

 照屋氏は24日夜、3択案に合意した理由の一つとして、宜野湾市役所前で行われた県民投票発起人によるハンガーストライキや5市の市役所に殺到した抗議に触れた。県連は抗議に屈していないことを強調するものの、県民投票に反対した5市長や自民党議員らは絶えず抗議を受けた。自宅押しかけの被害を受けた人もいる。

 沖縄2紙は連日、県民投票事務を拒否した5市とそれに同調する自民党を批判する記事を掲載。中でも、宮﨑政久衆院議員は、議員を対象とした勉強会で県民投票に参加しないよう「指南」したと断定する報道を行った。

 石垣市の中山義隆市長は、「抗議の電話やFAXは10日間で合計920件あり、業務に著しく支障を来した」が、抗議やハンストを受け入れた訳ではないことを強調した。

 宜野湾市役所によると、市に寄せられたFAXは1週間で約700件に上ったという。そのうち、ほとんどが県民投票への参加を求めるもので、県民投票の呼び掛け団体「県民投票の会」が作成したもの。また、抗議の電話が殺到し、業務に支障が出たことも認めている。