衆院沖縄3区の補欠選挙、4月21日に投開票
自民・島尻安伊子氏と革新・屋良朝博氏の一騎打ち
翁長雄志知事の死去によって行われた沖縄県知事選で玉城デニー知事が誕生してから、今月4日で3カ月がたった。だが、知事選で玉城氏側に吹いた風も、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に伴う土砂投入で、急速に弱まっている。そうした中、衆院沖縄3区(名護市など)の補欠選挙が4月21日、自民・島尻安伊子氏と革新系の屋良朝博氏との一騎打ちで行われる (沖縄支局・豊田 剛)
屋良陣営、米軍は抑止力になれず
島尻陣営、「辺野古」争点化は必要
玉城知事は4日、県職員向けに年頭のあいさつを行った。その中で知事は、政府が昨年末、辺野古沿岸に土砂投入したことについて、「多くの県民が反対の意思を示しているにもかかわらず、沖縄防衛局は違法な土砂投入を続けている」と批判し、職員一丸となるよう呼び掛けた。
辺野古の工事が進むことは、辺野古移設阻止を最大の公約に掲げた玉城氏にとって公約違反とのそしりを免れない。そのため、玉城氏を支える革新派は、衆院沖縄3区の補選は、県民の移設阻止を諦めない姿勢を見せるための重要選挙と位置付けている。
玉城氏が知事選に出馬するに当たり、自由党の小沢一郎代表は、公認候補は自由党公認で出馬するよう求めており、自由党沖縄県連は玉城氏の後継を探していた。最終的に、稲嶺進前名護市長とフリージャーナリストの屋良朝博氏(56)の2人に絞り込まれたが、稲嶺氏が固辞したことで、屋良氏に決まった。
小沢代表は昨年末、立憲民主党の長妻昭代表代行、国民民主党の玉木雄一郎代表、共産党の小池晃書記局長と個別に会談し、屋良氏への支援を要請。各党から前向きな返答をもらった。
ある革新系県議は「政党色が薄く、基地問題で理論武装ができている」と屋良氏を評価する。元沖縄タイムス記者の屋良氏は一貫して辺野古移設反対で、在沖海兵隊は抑止力維持にならないというのが持論だ。
昨年12月29日、沖縄市で出馬のための記者会見をした屋良氏は、「辺野古移設が本当に沖縄の負担軽減として得策か、他の選択肢はないか、逃げないで議論を戦わせたい」と主張した。辺野古への移設なしでの普天間返還は可能だとも訴えた。
会見に同席した小沢氏は、「沖縄の一議席を選ぶと同時に、その後の選挙、政局に大きな影響を及ぼす」と強調した。知事選で奏功した野党共闘の枠組みを衆院補選でも継続させ、夏の参院選に勢いづけたいのが小沢氏の本音だ。
一方、自民党県連は昨年末、3区支部による選考委員会を開き、島尻安伊子元沖縄北方担当相(53)を擁立する方針を決めた。島尻氏は安倍晋三首相や菅義偉官房長官の信頼が厚く、与党・官邸との結び付きが高く評価された。沖縄担当相の時代は、沖縄関係予算確保や税制改正などに尽力してきたことが評価され、県内の経済界や市町村長らの支持を集め、全会一致で候補者に選ばれた。
島尻氏は辺野古移設容認の立場を明確にしているが、共闘する公明県本部は反対している。昨年の名護や石垣、宜野湾の各市長選では辺野古移設について争点化を避け、経済振興を前面に出すことによって勝利した。
ただ、自民党県連は、昨年の知事選で辺野古移設を争点から外す戦略が有権者から支持されなかったことへの反省から、今度の補選では「移設の争点化は必要になる」(照屋守之県連会長)と考えている。
島尻氏は5日、自身の新年会で「多くの支持者から背中を押され、不退転の覚悟で臨みたい」と訴えた。3区の沖縄本島中北部と那覇都心部との南北経済格差を是正するため、北部振興を打ち出す考えを示した。
昨年の知事選以来、二つの市長選で保守系候補が敗れており、自民党県連は「何が何でも勝って流れを変える」と意気込む。特に3区は2014年、17年と連続して自民公認候補が玉城氏に敗れており、3連敗は許されないとの思いが強い。
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衆院沖縄3区補選
衆院議員だった玉城デニー氏が沖縄県知事選挙に立候補し失職したことに伴い行われる。
本来は昨年10月28日に補欠選挙が行われる予定だったが、衆院総選挙の一票の格差をめぐり選挙の無効を求める訴訟の判決が9月15日までに確定しなかったため実施されなかった。12月19日の最高裁判決で「1票の格差」が合憲と確定したことから、今年4月21日の実施が決まった。なお、今上陛下の譲位に関わる行事の日程を考慮し、本来の予定より1週前倒しで行われる。
選挙区は、沖縄本島中北部で、嘉手納基地の一部がある沖縄市やキャンプ・シュワブがある名護市など、県内の米軍基地面積の過半数を抱えている。







