空手ツアーで海外観光客増を 初の五輪正式種目を弾みに

那覇市と豊見城市で「第1回沖縄空手国際大会」

 沖縄の伝統空手・古武道の「型」を競う「第1回沖縄空手国際大会」(主催・同実行委員会、県、沖縄伝統空手道振興会)が1日から7日間の日程で、那覇市の県立武道館と豊見城市の沖縄空手会館で行われた。世界50カ国・地域から競技に約1200人、沖縄空手セミナーと合わせて約2300人が参加した。2020年の東京五輪で空手が初めて正式種目に採用されることを弾みに、沖縄の空手を海外観光客を取り込む柱に据える取り組みも行われるようになった。(那覇支局・豊田 剛)

世界50ヵ国・地域と沖縄から2300人が参加

空手ツアーで海外観光客増を 初の五輪正式種目を弾みに

奉納演武をした(左から)東恩納(ひがおんな)盛男、仲本政博、佐久川政信、平良慶孝、阿波根(あはごん)直信、島袋善保の各氏=1日午前、沖縄県豊見城市の沖縄空手会館

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 空手は、琉球国時代の沖縄で誕生した拳足による護身を特徴とする武道。空手道の起源には諸説があるが、一般には沖縄固有の拳法「手」に中国本土の武術が付加され、「唐手(トゥーディー)」と呼ばれた。薩摩藩の示現流や夕雲流剣術など日本武術の影響も受けながら発展してきた。競技としての空手とは違い、「型」が重視されるのが特徴だ。

 沖縄県によると、現在、世界中に約1億3000万人の空手愛好家がいるとされ、空手の“聖地”沖縄には世界中から空手家が集まる。

 沖縄伝統空手には、沖縄県空手道連合会、沖縄県空手道連盟、全沖縄空手道連盟、沖縄空手・古武道連盟の4団体がある。2008年2月、4団体をまとめる統一組織として「沖縄伝統空手道振興会」が設立され仲井真弘多知事(当時)が会長に就任。その翌年、振興会の設立を記念した沖縄伝統空手道世界大会が那覇市で開かれ、34カ国から約650人が参加した。

 今回は、それをはるかに上回る国・地域と参加者を記録。県主催の空手世界大会として過去最大となった。海外からは、米国が146人で最多。124人のインド、99人のアルゼンチンが続いた。

空手ツアーで海外観光客増を 初の五輪正式種目を弾みに

開会式で整列した海外の参加者ら=1日午後、沖縄県那覇市の県立武道館

 開催目的は、「世界中の沖縄空手の愛好家が沖縄の地に集結し交流を深める場を創出するとともに、沖縄で先人たちが体系化し今日まで受け継がれてきた沖縄空手の技や精神性を今後も正しく保存・継承し、沖縄伝統空手および古武道の将来にわたっての振興を図る」ことだ。大会は、各流派の違いを尊重し、首里・泊手系、那覇手系、上地流系、古武道(棒)、古武道(サイ)の5部門に分かれ競い合った。

 圧巻だったのは、開会式に先立って行われた奉納演武だ。豊見城市の沖縄空手会館「特別道場」で、県内空手界の重鎮6人が迫真の演武を披露した。県指定無形文化財「沖縄の空手・古武術」保持者の仲本政博さん(80)、同保持者の東恩納盛男さん(79)、全沖縄空手道連盟の佐久川政信会長(69)、県空手道連盟の平良慶孝会長(74)、沖縄空手・古武道連盟の阿波根直信会長(78)、県空手道連合会の島袋善保会長(74)の6人は、各流派の伝統の型を披露、大会の成功を祈願した。

 開会式では、各国の参加者は国旗を振ったり、スマホで撮影したりしながら入場。五輪さながらの盛り上がりをみせた。

 空手界を代表して「沖縄の空手・古武術」保持会の友寄隆宏(89)会長が登壇し、「心がざわついていたら相手の心が読めない。常に心を冷静に保ってください」と選手を指導した。同氏が登壇するや、ざわついた会場は静まり返り、世界各国の選手は真剣な表情で聞き入っていた。

 空手は沖縄の観光PRにも寄与している。

 沖縄県は大会のPRと参加者募集を目的に、1月、東京、スペイン・マドリード、英ロンドン、ドイツ・ミュンヘンの4都市を巡る大会周知キャラバンを展開した。ミュンヘンのキャラバンを誘致したのは、マレーシアにルーツを持つ少林流聖武館のマエサラ・ジャマールさん(69)だ。空手歴は38年で、年に2、3回は沖縄を訪れるほどの熱の入れようだ。

 オーストラリアから参加したアレックス・ガレアさん(42)は、少林寺流空手を始めて20年。空手の原点に立ち返るため2年に1度は沖縄を訪問している。「沖縄に滞在する10日間でできるだけ多くのことを吸収し、心身を鍛えたい」と語った。

 ガレアさんに象徴されるように、「沖縄を訪れる空手家の平均滞在日数は9日間」(沖縄県文化観光スポーツ部)で、他の観光客よりも長期滞在の傾向がある。

 空手を沖縄観光の柱に据える取り組みが検討されてきたが、このほど、県内道場など空手ゆかりの場所の観光を組み入れた旅行メニューを提供する旅行会社が那覇市に誕生した。担当者は「沖縄空手はまだ知名度が低い。沖縄に外国人をたくさん招き、収益が出る仕組みをつくりたい」と話す。県当局は、東京五輪を契機に海外観光客をより多く取り込み、「沖縄イコール空手」のイメージを発信したい、と意気込んでいる。


= メ モ =

近年の沖縄空手のあゆみ

2005年
沖縄県議会、10月25日を「空手の日」に制定
2008年
空手道4団体の統一組織として、沖縄県知事を会長とする「沖縄伝統空手道振興会」設立
2009年
沖縄伝統空手道世界大会開催
2014年
世界のウチナーンチュ大会で空手・古武道交流演武会で3973人が一斉演武し、ギネス世界記録を更新
2017年
空手のテーマパークとして「沖縄空手会館」が豊見城市に誕生