キャンプの軍人らと地元との関係は「世界一」

名護市の米軍キャンプ・シュワブ基地司令ケビン・ノートン大佐に聞く

海兵隊は「辺野古第11班」

 日米両政府が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先に決めた米軍キャンプ・シュワブ基地(名護市辺野古)ゲート前での反基地デモが連日のように報道されているが、実はキャンプ・シュワブの軍人らは地元の人々との関係が非常に良好で、「辺野古区民」として受け入れられている。いかにして地元民との関係を築いているのか、キャンプ・シュワブ司令のケビン・ノートン大佐に聞いた。(聞き手=那覇支局・豊田 剛)

好評の英会話ボランティア、市教委が12年連続感謝状

 ――キャンプ・シュワブの任務の特徴は。

キャンプの軍人らと地元との関係は「世界一」

米軍キャンプ・シュワブ基地司令ケビン・ノートン大佐

 軍人数は平均3500人だが、ずっとシュワブ基地内にいる軍人は500人程度しかいない。他の基地と違うのは遠征軍基地ということだ。6カ月間、米国や同盟国を転々しながら訓練を行う。新しい部隊が到着するとすぐにオリエンテーションがある。その一環として辺野古についてレクチャーを受け、地域とどのように付き合っていくかを学ぶ。

 私が沖縄に海兵隊員として初めて赴任したのは1991年だった。それからキャンプ・シュワブで中隊長を経験し、支援戦闘作戦に従事した。シュワブで勤務するのは03年以来になるが、地元の人々はいつも歓迎してくれている。沖縄県民との関係でこれまで、一度も嫌な経験をしたことがない。

 ――地域活動として英会話クラスの設置が知られている。

 2003年に当時の基地司令ドリュー・ベネット大佐が、キャンプ・シュワブ渉外官の伊波文雄さんと一緒に成人向けの英会話教室を始めた。それ以来、毎週、基地内外で社会人に英会話を教えている。これまで120人から150人の英会話ボランティアが携わった。これまで延べ3000人が英会話を学んだ。現在、20代から80代の地域住民が100人ほど通っている。

 2016年にはキャロライン・ケネディ駐日米大使(当時)がクラスを見学した。好評なため地元からは、ずっと続けてほしいとの要請を受けている。

 ――幼児対象のクラスも盛んだと聞いているが。

キャンプの軍人らと地元との関係は「世界一」

キャンプ・シュワブの司令室には辺野古区から寄贈された「辺野古第11班」の旗が飾られている

 保育園の英会話ボランティアは1997年からスタートした。クリスマスやハロウィーンなど特別な日に開催していたが、10年前から月1回のペースになり、市内全幼稚園に対象を広げた。

 昨年度、軍人と軍属は、市内にある14の保育園と幼稚園を毎月訪問し、年間600人以上の園児たちと英語で触れ合った。これまで3000人の軍人軍属が協力してくれた。

 名護市教育委員会は12年連続で、ボランティアの隊員らに感謝状を授与している。今年は45人が表彰された。一方、英会話クラスの参加率が高い人には軍からも終了証を渡すようにしている。

 日中の任務を終えてからのボランティアは、隊員にとって簡単なことではない。それでも週末、家族の用事を差し置いて自主的に参加してくれる。誰一人として嫌な顔をしない。むしろ喜んで参加してくれている。最近では、地元の人々がアメリカに帰る隊員のうち、英語講師を4年間務めた大尉ら2人の送別会をしてくれた。

 ――英会話以外のボランティア活動にはどのようなものがあるか。

 児童養護施設を訪れたり老人介護施設を慰問したりしている。軍の婦人クラブが生活必需品を寄付している。物が足りている場合もあり、施設の清掃、草刈り、ごみ拾いもしている。また、台風の後処理など、何か力仕事のリクエストがあれば応じている。

 ――毎年恒例の、基地が開放されるシュワブ・フェスティバルがある。

 今年は3月24日と25日の2日間開催され、地元から約1万人が訪れ、ライブ音楽を楽しんだ。車両、装備品の展示も目玉の一つだが、今回は陸上自衛隊第15旅団も展示に参加した。

 来場者の関心を集めたのはオスプレイだ。2年連続での展示となったが、来場者からは性能や安全性について多くの質問を受けた。こうした交流を通してオスプレイについて誤解が解かれ、正しい理解につながったと思う。

 ――地域の行事にはどのように関わっているのか。

 毎週、何らかの地域の行事に参加しており、カレンダーはほぼ毎日埋まっている。

 辺野古区は区民として私たちを受け入れてくれている。辺野古には10班あるが、シュワブは第11班として、ハーリー(爬竜(はりゅう)船競漕)、大綱引き、相撲大会、運動会、野球などの行事に参加している。

 キャンプ・シュワブは1959年、当時の久志村が要請してできたもので、雇用促進にもつながった。それ以来、地元と基地は緊密な関係が構築されている。

 地域交流に関して、世界のどの米軍基地よりも活発だと自負する。シュワブほど地元との関係が良い基地は世界中どこを探してもないだろう。


= メ モ =

ケビン・ノートン

 ニューイングランド州リンカーンにあるユニオン大学で、社会科学と教育学を学ぶ。1990年、海兵隊へ入隊。92年に初めて沖縄へ赴任。2016年6月、第3海兵師団第4海兵連隊長兼キャンプ・シュワブ基地司令(大佐)に就任。現在に至る。