2企業が「オール沖縄」離脱 革新色強まり不信募る

「県民投票」で見解食い違い 翁長知事の健康不安表面化

 翁長雄志知事を支える「オール沖縄会議」(以下、「オール沖縄」)の一角を担う大手2企業が相次いで離脱した。元自民系会派はすでに解消しており、これで「オール沖縄」の保守中道勢力がなくなり、革新共闘色が濃厚となった。翁長氏は12月に任期満了を迎えるが、健康不安も表面化しており、知事選への影響は避けられないとの見方が多い。(那覇支局・豊田 剛)

2企業が「オール沖縄」離脱 革新色強まり不信募る

名護市長選で革新系候補の応援演説をした金秀グループの呉屋守将会長=2月3日、沖縄県名護市

 沖縄県内のスーパー・建設大手の「金秀(かねひで)グループ」の呉屋守将(もりまさ)会長は3月1日、「オール沖縄」の共同代表を辞任し、脱退した。これに続き、4月3日には、ホテル大手「かりゆしグループ」の當山(とうやま)智士社長が離脱を表明した。

 「オール沖縄」は、新型輸送機オスプレイの沖縄配備や普天間飛行場の辺野古移設の断念を目的として2015年12月、結成された。「多くの市民団体や政党、労働組合や経済界、個人に支えられている」とアピールしてきた。だが、経済界と言っても事実上、金秀とかりゆしの2グループだけ。その両企業が脱退したわけだ。

 金秀の呉屋会長はその理由について、今年2月の名護市長選で支援した辺野古移設反対を掲げた候補が敗北したことを挙げた。かりゆしの當山社長は「辺野古埋め立ての是非を問う県民投票をめぐり、立場の相違を乗り越えられなかった」と語った。

2企業が「オール沖縄」離脱 革新色強まり不信募る

記者会見で「オール沖縄」離脱を表明した、かりゆしの當山智士社長(左)と糸数昌高副社長=3日、沖縄県那覇市

 両グループトップの基本的立場は、県民投票を実施した上での埋め立て承認撤回である。ところが、「オール沖縄」の中核を担う共産、社民、リベラル識者らは県民投票の実施について慎重論が根強い。社民党幹部は、「短期間に必要な署名を集めることも、市町村の協力を得ることも厳しい」とし、共産は県民投票よりも知事による「辺野古埋め立て承認撤回」を求めている。連合沖縄は、大田県政時代の1996年に実施された「基地整理・縮小と日米地位協定の見直し」の是非を問う県民投票では、実質的な運動を展開したが、今回は静観している。

 4月に副知事に就任した謝花喜一郎氏も県民投票について「新年度早々にも専門家の意見の聴取を含め、作業を進めていくことになると思う」と意義を強調する一方で、「県民が主体となることが極めて重要」と述べ、県がイニシアチブを取ることに消極的な姿勢を示している。

 県民投票には条例の制定が必要だ。地方自治法によると、有権者の50分の1以上の署名を集めた上で県議会の同意を得なければならないため、「オール沖縄」の中核が動かなければ成立はおぼつかない。

 當山氏はまた、「(オール沖縄が)イデオロギー的になったと感じている。革新色が強くなったと思う」と述べた。17年7月の那覇市議選で翁長氏を支えた元自民系会派「新風会」もすでに解消しており、知事選に向け、「党利党略とは関係のない新たな枠組みが必要だ」と同氏は強調した。當山、呉屋両氏に共通しているのは、「オール沖縄」が共産党主導となってしまい、革新色が強まったことを嫌っている点だ。

 當山氏は、「ポスト翁長雄志は翁長雄志しかいない」と強調している。ただ、ここにきて、翁長氏の健康不安が表面化した。5日に人間ドックを受診したところ、医師から再検査の指示があり入院。8日から予定されていた中国訪問を取りやめた。

 翁長氏は10日、再検査を受けた浦添市の病院で主治医同伴で記者会見し、すい臓に腫瘍(しゅよう)が見つかったことを明らかにし、近く手術すると語った。主治医は「今のところは良性か悪性かは診断できない」とし、翁長氏は「根治する方向で治療し、病気と相対しながら知事としての責任を全うしたい」と述べた。

 だが、翁長氏の健康状態によっては知事選が前倒しとなる可能性も排除できない。また、出馬できるか否かも不透明になった。翁長氏はこれまで去就について具体的に言及していないが、県政与党は翁長氏の再選を軸に調整会議を立ち上げている。「ほかの候補者の名前は出ていない」(新里米吉県議会議長)というが、確定までには時間がかかりそうだ。