在沖米軍2000人を朝鮮半島に展開


半島危機には即応態勢で

在沖米軍ニコルソン四軍調整官語る

 朝鮮半島の緊張が高まる中、日米同盟の強固な関係構築が不可欠だ。在沖縄米軍はアジア太平洋地域の安全と安心の担保に尽力する一方で、航空機の騒音対策など地元住民への負担軽減に努めている。在沖縄米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官(中将)は16日の記者会見でその両面を強調した。(那覇支局・豊田 剛)

基地負担軽減のため隊員の綱紀粛正を徹底

在沖米軍2000人を朝鮮半島に展開

記者会見したニコルソン中将=16日、沖縄県うるま市のキャンプ・コートニー司令部

 在沖縄米軍トップのニコルソン四軍調整官は16日、沖縄県うるま市の米軍キャンプ・コートニーで在沖米総領事館のジョエル・エレンライク総領事と合同記者会見を開き、米軍は地元への負担軽減のために綱紀粛正に取り組み、その中でも、飲酒運転を厳しく取り締まっていると説明した。

 ところが19日、米海兵隊の軍人が那覇市の国道を飲酒運転し、日本人男性の運転する車両と衝突し、日本人男性が死亡した。ニコルソン四軍調整官は同日、「事故で亡くなった方のご家族や沖縄の友人に深い遺憾と哀悼の意を示したい」と表明。事故原因を究明し、再発防止のため「あらゆる手段を講じる」と語った。この事件を受けて、在日米軍司令部は日本国内に駐留しているすべての兵士に対し、基地内も含めた飲酒の禁止や夜間の外出禁止を指示した。

 沖縄では昨年4月、軍属の男がうるま市で女性を殺害し遺棄した容疑で逮捕される事件が起きた。16日の会見で、ニコルソン氏は改めて「申し訳ない気持ちだ」と謝罪した上で、「沖縄に住む約5万人の軍人・軍属を代表するものではなく、ほとんどは沖縄の地域社会と融合している」と理解を求めた。

 さらに、米軍機をめぐっては、名護市の東海岸沖でのMV22オスプレイの不時着、東村の民家に大型ヘリCH53が緊急着陸・炎上など、このところ大きな事故が続いた。県民の間で米軍に対する懸念が増幅している現在、見える形での「基地負担軽減」が求められている。

在沖米軍2000人を朝鮮半島に展開

翁長雄志知事(右)を表敬訪問したハガティ米駐日大使=13日、沖縄県庁

 CH53の事故については調査中だが、オスプレイの事故報告は「過酷な訓練状況下での人為的ミスだった」と発表されている。ニコルソン氏は「安全に飛行できるよう訓練をするのが私の責任」と強調。その上で、「日米同盟が地域の平和と安定、繁栄に寄与してきた。それを維持するためには昼夜、天候を問わず厳しい訓練を重ねて即応態勢を取ることが重要だ」と説明した。

 北朝鮮や中国などに対する抑止も在沖米軍の大きな役割の一つだ。記者会見の冒頭、ニコルソン氏は北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイルの発射に言及し「日米の国民に北朝鮮の真の脅威が迫っている」と強調した。

 実際、司令官自身は過去数カ月、朝鮮半島有事に備えた訓練のため出張していることの方が多く、今でも在沖米軍は2000人規模で韓国に展開しているという。

 朝鮮半島危機から日米両国民を守る決意を語ったニコルソン氏は、「バランスを保つことが大事。地元の負担を軽減させるが、即応体制は絶対に軽減させるわけにはいかない」と述べ、沖縄での応分の基地負担に理解を求めた。

 基地負担を軽減しつつ抑止力を維持させる案として、ニコルソン氏は、沖縄本島の北部および中部訓練場を将来的に自衛隊と共同使用することを持論とする。日本政府は来春、海兵隊に準じる水陸機動隊を陸上自衛隊に新設するが、2020年代前半にもキャンプ・ハンセン(金武町)に同機動隊を配置する案が浮上している。

 ニコルソン氏は「海兵隊と自衛隊が寝食を共にしている」岩国基地を例に挙げ、「沖縄でも共同使用・訓練がなぜできないか」とし、「今後、一定の海兵隊員がハワイ、グアムに移転して兵力が削減されることをきっかけに、キャンプ・ハンセンかキャンプ・シュワブ(名護市)に水陸機動隊が駐留するのが理想的だ」と述べた。

 ニコルソン氏は、記者会見の最後に米軍普天間飛行場(宜野湾市)のキャンプ・シュワブ沖への移設阻止を訴える翁長雄志知事について、「意見の食い違いがあるが、同意できないことより同意できることの方が多い」とコメントし、翁長氏の理解と歩み寄りに期待を示した。

 ただ、ビル・ハガティ米駐日大使が13日、沖縄県庁を表敬訪問した際、翁長知事は辺野古代替施設の建設を沖縄県民に対する「差別」だと強調。オスプレイについては、「万が一、住宅地に米軍機が墜落したら日米同盟が危うくなる」と訴えるなど、米軍が抑止力の役割を果たすという考えに真っ向から反対した。米国としては、沖縄県の描く辺野古移設の落としどころ、本音がどこにあるのか、探りかねている状態だ。