辺野古移設反対の翁長知事支える「県民大会」

参加実数は昨年より半減、埋め立て承認撤回は明言せず

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する翁長雄志沖縄県知事を支える大規模な集会が12日、那覇市で開かれた。政府が4月に辺野古で護岸整備に着手してから初めての集会だが、会場は昨年に比べて空席が目立ち半減したものとみられる。(那覇支局・豊田 剛)

オスプレイ豪墜落、配備撤回求めるのみ米兵哀悼の言葉なし

辺野古移設反対の翁長知事支える「県民大会」

参加者が昨年より半減した「県民大会」会場=12日午後、沖縄県那覇市の奥武山公園陸上競技場

 政府は4月25日から、辺野古移設に向けて埋め立ての第1段階となる護岸工事に着手している。これに対して、県は7月24日、辺野古の工事差し止め訴訟を提起し、工事中止の仮処分も申し立てた。昨年に続いて政府と県が法廷で争う事態になっている。

 集会は「翁長知事を支え、辺野古に新基地を造らせない県民大会」と題し、「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」(以下「オール沖縄会議」)が主催した。革新系市民団体や政党、労働組合、一部経済界、学術関係者などから構成されている。

 翁長県政に是々非々の立場を取る公明、維新の会、地域政党そうぞうは参加していない。また、元自民系で翁長氏に同調して除名処分された那覇市議会「新風会」は7月の市議選で惨敗を喫し、会派が解消した。

 共同代表には、沖縄の小売り大手かねひで社長の呉屋守将氏、元那覇市議で「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」代表の高里鈴代、「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)琉球」の玉城愛、琉球大学法科大学院教授で、県憲法普及協議会会長の高良鉄美氏が就いている。

 登壇した翁長氏は、革新団体が埋め立て承認撤回を求めていることについて「政府が工事を強硬に推し進める状況は必ず埋め立て承認撤回につながる。あらゆる情報を判断して私の責任で決断をする」と強調。「辺野古に新基地を造ることは絶対にできないと確信している」と述べた。

 米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイが5日、オーストラリア沖で墜落したことについて、「まさしく県民が危惧した状況に憤慨が絶えない」と指摘。オスプレイの飛行再開を日本政府が容認したことを強く批判した。

 大会宣言では「政府は法解釈をねじ曲げ、沖縄の民意を圧殺し続けている。手続きを無視し、法を犯してまで行う埋め立て工事は即中止すべきだ」と主張。「私たちは翁長知事が提訴した辺野古新基地建設工事を差し止める訴訟を支持し、全力で支える」と訴えた。

辺野古移設反対の翁長知事支える「県民大会」

米軍に連帯のメッセージを送るハートクリーンのメンバーたち=11日午前、沖縄県宜野湾市の普天間飛行場大山ゲート前

 また、オスプレイの配備撤回、米軍普天間飛行場の即時閉鎖・撤去、オスプレイの国内飛行禁止、自衛隊へのオスプレイ導入撤回を盛り込んだ。

 決議は後日、日米両政府の関係省庁・機関に直接提出。また、今月16日からオール沖縄会議の代表団が米サンフランシスコなどを訪れ、市民団体や労働組合、米連邦議会議員などに辺野古反対を訴える予定だ。

 集会には、主催者発表で4万5千人が参加した。ところが、昨年6月、元米兵による女性暴行・殺人事件に抗議する集会が同じ場所で開催され、主催者発表で6万5千人が参加したが、公安関係者の調査などから実際の参加者数は約2万人程度とされている。今回は、その3分の2から半分程度の参加者だったことから、実数は約1万人といったところだろう。

 参加者水増し発表を含め、革新主導の集会への同調者が激減していることが浮き彫りになった形だ。

 他方で、米軍基地配備や辺野古移設に理解を示す県民も多い。米軍と「良き隣人」であることを示すために自発的にできた団体ハートクリーンプロジェクトは11日、普天間飛行場ゲート前で犠牲になった海兵隊員に哀悼の意を示し、「忘れないでください。私たちは常にここにいることを」と英語で書かれた横断幕を掲げた。

 同団体の手登根安則代表はこう語った。

 「沖縄で私たちと同じように生活していた若い海兵隊員の不慮の事故で失われた命には、哀悼の言葉ひとつ出さないまま、まるで事故を待ってましたとばかりに抗議する沖縄県知事、議会、マスコミなどは、人命の重さに差をつけているとしか思えない。いつから沖縄はこんなに冷たくなってしまったのか」

 12日の集会では10人以上が登壇したが、オスプレイ事故で犠牲となった海兵隊員3人に哀悼の意を表す声は一切なかった。