辺野古移設をめぐって、国と県が再び法廷闘争へ
県「岩礁破砕に許可が必要」/国「地元漁協が漁業権放棄」
米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への移設阻止に向け、沖縄県は工事の差し止めを求める裁判を起こす方針を決めた。20日開会予定の県議会定例会に必要な議案を提出し、議決後、早ければ今月中にも裁判を起こす。辺野古移設をめぐる県と国の対立は、昨年に続き再び法廷闘争に入ることになる。(那覇支局・豊田 剛)
「革新勢力向けのアピール」/自民、知事を徹底追及の構え
翁長雄志知事は7日夕、緊急記者会見を開き、沖縄防衛局が県の岩礁破砕許可を得ずに工事を進めるのは県漁業調整規則違反だとして、工事の差し止めを求める訴訟を起こすと発表した。
翁長氏は、移設工事で知事権限の岩礁破砕許可が必要かどうかについて法令を所管する水産庁が「県の照会に答えておらず、過去の政府見解などとの整合性が合理的に説明されていない」と批判。「許可のない岩礁破砕行為が行われないよう、法的措置を求める必要があると判断した」と語った。
また、政府の対応について「なりふり構わず埋め立て工事をするという既成事実をつくろうと躍起になっている」と指摘。大浦湾の海を埋め立てて国有地となることに懸念を示し、「耐用年数200年とも言われる基地の建設は到底容認できない」と強調した。
県の主張は、3月末で海底の岩礁を壊す許可の期限が切れていることから、工事を続けるには県の許可を得る必要があるというもの。これに対し国は、地元の名護漁協が1月に漁業権を放棄したため、「漁業権のない海域での岩礁破砕許可は必要ない」としており、見解が大きく分かれている。
県から行政指導を受けた沖縄防衛局は5月29日、埋め立て海域の漁業権は消滅しているため、岩礁破砕許可は不要と回答。その3日後に、新たな岩礁破砕許可は必要ないとする文書を県に提出した。
これに対し、県は岩礁破砕行為につながる作業、または、岩礁破砕行為の確認が行われていなくても提訴する方針だ。また、訴訟の間も工事が進められることから、県は判決が出るまでの間、工事を止めるよう求める仮処分も併せて申し立てる。
移設工事をめぐっては昨年12月、翁長知事による埋め立て承認の取り消しをめぐる最高裁裁判で沖縄県の敗訴が確定している。にもかかわらず、国と県が再び法廷で争うことになるのだ。
前回裁判で「和解条項に従う」と明言したことについて翁長氏は、「最高裁判決が出たから国がどんな工事のやり方をしてもいいわけではない」と主張。「岩礁破砕許可と和解条項は関係ない」(担当弁護士)との見解だ。
ただ、今回の訴訟は審理入りするかどうか疑問視する向きもある。2002年、宝塚市パチンコ店規制条例事件で最高裁が「国や自治体が行政上の義務の履行を求める訴えは訴訟に当たらず不適法」と判断している。訴えは門前払いされる可能性もある。
菅義偉官房長官は7日の記者会見で「(国の対応は)全く問題はない。必要な法令上の手続きは水産庁に確認した上で、適切に対応している」と述べた。
辺野古移設反対という「民意」を味方に強気の翁長氏だが、知事を支える「オール沖縄」革新勢力が今年の市長選で3連敗している。翁長氏は5月26日の記者会見で「知事選、衆院選、参院選で『新辺野古基地』を造らせないという民意は表れている」と主張した。その一方で、市長選の連敗結果については「(移設反対か推進かという)立場に関係なく現職が強い」と述べただけで明確な回答を避けた。
翁長氏はまた、6月7日の会見で埋め立て承認撤回の時期について明言を避けた。普天間飛行場の県内移設断念を求める「島ぐるみ会議」は、知事が承認撤回をしないことで不安と不信が生じているとし、一日も早く承認を撤回するよう要請している。
ある保守系県議は、「知事は、革新勢力に対する単なるアピールとして法廷を利用している。来年1月の名護市長選、11月(予定)の知事選に向けてのパフォーマンスにすぎない」と手厳しく批判。自民党会派は今月中に開催予定の県議会6月定例会で訴訟について徹底的に追及する構えだ。
昨年、埋め立て承認取り消しにより宜野湾市民が損害を被ったとして翁長氏を訴えた「宜野湾市民の安全な生活を守る会」の平安座唯雄団長は、「再び訴訟をするのは由々しき問題だと思っている」と不快感を示すとともに「前回は国が勝ったことで工事が進むため訴訟を取り下げたが、訴訟の行方次第で再度、知事を訴えることもある」と強調した。






