辺野古移設、埋め立てを着実に進めよ
政府は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先とする同県名護市辺野古で、きょうにも埋め立て区域を囲む護岸工事を開始する。
埋め立て本体工事は1996年の日米両政府による普天間返還合意以来初めてとなる。長い時間がかかったが、着実に工事を進める必要がある。
阻止を目指す翁長氏
政府はきょうにも、大量の石材を海底に投下して工事に着手する。来春には土砂の搬入も始め、5年ほどで埋め立てを終える予定だ。
普天間飛行場は住宅密集地に囲まれ、小学校や中学校にも隣接。「世界一危険な飛行場」と呼ばれる。辺野古への移設は、危険除去と在日米軍の抑止力維持を両立させるための「唯一の解決策」だ。
普天間返還合意から今月で21年。2006年に辺野古移設の現行案で一致してからも10年以上が経過した。埋め立て本体工事開始は大きな節目と言える。
当初、移設完了目標は14年とされていた。だが、09年に「最低でも県外」と公約した民主党の鳩山政権が、県外移設を模索しながら辺野古移設に回帰し、問題を迷走させた。13年には当時の仲井真弘多知事が埋め立てを承認したものの、14年11月に当選した翁長雄志知事が承認を取り消した。このため、国と県の訴訟合戦に発展するなど泥沼化した。
最高裁は昨年12月、国が地方自治法に基づき知事を相手に起こした訴訟の上告審判決で、埋め立てを承認した仲井真氏の判断について「明らかに妥当性を欠くものではない」と指摘。判断を取り消した翁長氏の対応は違法とした。当然の結論だ。
翁長氏は移設阻止に向け、埋め立て承認の「撤回」を含め、あらゆる対抗策を講じる意向を示している。撤回は承認後の事情の変化を理由に行使可能で、承認前の事情を理由とする「取り消し」と同様の効果がある。
しかし、不毛な争いはもうやめるべきだ。県内では今年1月の宮古島市長選、2月の浦添市長選、そして今月のうるま市長選で、いずれも翁長氏の支援した候補が敗れている。翁長氏への県民の支持は失われつつあると言えよう。
そもそも、翁長氏は日本を取り巻く安全保障環境の厳しさをどのように考えているのか。北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐる情勢は緊迫化し、中国は沖縄県に属する尖閣諸島を奪取しようとしている。中朝両国の脅威に対処する上で、在日米軍の抑止力維持は欠かせない。特に沖縄は、地政学上も戦略上も安全保障の要石と言っていい。
もちろん政府は、可能な限り沖縄の基地負担軽減に取り組むべきだろう。昨年12月には、沖縄県最大の在日米軍施設・区域である北部訓練場の過半に当たる約4000ヘクタールが日本側に返還された。普天間返還は25年になる見通しだが、翁長氏の埋め立て承認撤回などで工事が中断されれば返還は遅れ、普天間の危険な状況が続くことになる。
負担軽減につながる
政府は、辺野古移設が基地負担軽減につながることを丁寧に説明し、県民の理解を得られるよう努める必要がある。