国民保護法、万全な態勢へ見直しが必要だ
北朝鮮は弾道ミサイル発射を繰り返しているだけでなく、6回目の核実験を準備しているとされ、韓半島情勢は緊迫の度を強めている。
国民の生命を守ることに「想定外」があってはならない。ミサイル攻撃への備えは十分か。国民保護法の見直しを求めたい。
北ミサイルの脅威高まる
北朝鮮は先の故金日成主席生誕日の軍事パレードで7種類の弾道ミサイルを公開した。3月には金正恩朝鮮労働党委員長が在日米軍基地への攻撃を想定した4発のミサイル発射実験を指揮したという。
こうしたことから半島有事ではミサイル攻撃もあり得るとされる。それだけにミサイル防衛に齟齬(そご)があってはなるまい。自衛隊は弾道ミサイル防衛(BMD)システムを導入し、海上と陸上の二段構えで迎撃するが、撃ち漏らしが生じる可能性は否定できない。
このため2004年に制定された国民保護法では、発射情報を全国瞬時警報システム(Jアラート)で市町村に伝達し、市町村は防災無線などを通じて全住民に知らせ、避難させる計画を立てている。
ミサイルは数分から10分で日本上空に飛来するので、情報伝達は一刻を争う。しかし、12年4月には発射から40分以上も過ぎてから発表された。防衛政策に疎い民主党政権だったこともあるが、システムに欠陥がないか、入念な点検が必要だ。過去の訓練では防災無線の不備や老朽化で自動速報できなかった地域もあった。
また、ミサイル攻撃を想定した避難訓練は秋田県男鹿市を除いて実施されていない。計画しているのも長崎県だけだ。保護計画は大都市では直近の屋内施設への避難を促す。
だが、それに応じる国民の義務はない。韓国では空襲警報を鳴らして全市民が避難訓練を行っているが、そうした訓練もない。これでは有事に烏合の衆になりかねない。
NBC(核・生物・化学)兵器への備えも不十分だ。北朝鮮の核実験やシリアでの毒ガス攻撃はミサイルにNBC兵器が搭載される可能性を示唆している。しかし、わが国には核シェルターやその代用となる地下施設も存在しない。
こうした問題を克服するためには、国民保護法を抜本的に見直し、民間防衛という視点を盛り込む必要がある。海外では学校で核攻撃に対する防備教育を行い、「まず目と耳を保護し、伏せる、這(は)いながら、安全スペースに入る」といった訓練も実施している。
地域レベルでは「民間防衛組織」を結成し、有事のみならず自然災害に備えている。スイスの民間防衛組織は「核兵器・化学兵器班」を設け、NBC兵器の攻撃に備えている。海外の仕組みを参考に、自主防災組織を国民保護体制の中で再編成することも考慮したい。
抜本改正を目指したい
こうした取り組みは左翼メディアや一部野党から「軍国主義の復活」「戦時体制」といったレッテルを貼られるだろう。だが、いつまでも「平和ボケ」を続けるわけにはいかない。国民保護法の抜本改正を目指したい。