翁長知事「苦渋の選択」、ヘリパッド移設容認か

発言がコロコロ、「反対」は一度も明言せず

 普天間飛行場(宜野湾市)のキャンプ・シュワブ(名護市辺野古)沖への移設の前提となる埋め立て承認の取り消しをめぐる国との訴訟で、沖縄県の敗訴が確実となった。沖縄県の翁長雄志知事は移設に頑(かたく)なに反対しているが、北部訓練場(東村、国頭村)のヘリパッド移設を伴う部分返還については、「苦渋の選択」と言った翌日、「容認しない」と強調するなど、発言がコロコロ変わっている。(那覇支局・豊田 剛)

翁長知事「苦渋の選択」、ヘリパッド移設容認か

県議会で厳しく質問する島袋大県議(手前)に目を合わせようとしない翁長雄志知事(奥)= 12月8日、沖縄県議会

安慶田副知事が沖縄2紙を訪問

「公約違反」報道で政治介入か

 翁長雄志知事は11月28日、知事就任2周年を前に報道各社のインタビューに応じ、米軍北部訓練場の約半分が返還されることに伴い、ヘリパッドが建設されることについて「苦渋の選択の最たるもの」で「ヘリパッドが返ってくることに異議を唱えるのは難しい」と述べた。

 翌日、翁長氏は会見で「容認ではない」と釈明した。「苦渋の選択」という言葉は通常、苦しい思いを抱きながらやむを得ず選択することを意味する。「苦渋の選択」は「容認ではない」という説明に疑問が残った。

翁長知事「苦渋の選択」、ヘリパッド移設容認か

「知事ヘリパッド容認」の大見出しを付けた11月29日付の沖縄2紙

 琉球新報と沖縄タイムスは29日付の1面で「ヘリパッド容認」という大見出しを付け、知事を批判した。翁長氏は2014年10月に行った知事選出馬の公約発表会見で、「オスプレイの配備撤回を求めている中で連動し、ヘリパッド建設に反対する」と明言したからだ。

 2013年末、仲井真弘多前知事が政府の予算満額回答を受けて「いい正月を迎えられる」と述べたことで、マスコミから激しい批判を受けたことは記憶に新しい。公約違反のレッテルを貼られることは、「保革を超えて県民の心を一つに」をモットーに、「オール沖縄」を唱える翁長氏にとって致命的だ。

 記者会見の翌日、知事は、ぶら下がり会見で「ヘリパッドを容認しておらず、2紙の報道は不本意だ」と述べた。翁長政俊県議(自民)は「過剰反応だ」と批判した。

 それだけにとどまらない。安慶田光男副知事は30日、沖縄2紙を訪問。「なぜ容認という表現となったのか」と問いただしたという。その後、2紙の知事批判が一気にトーンダウンしたことは否定できない。

 6日に始まった県議会12月定例会代表質問では、副知事による地元紙訪問、知事のヘリパッド移設容認が大きな議論になった。

 島袋大県議(自民)は、安慶田氏の2紙訪問は県による政治介入だと批判。安慶田氏は「なぜ『容認』と書かれたのか、意見交換をしようと思った。決して圧力をかけた訳ではない」と説明。県幹部が地元メディアを訪問し、政治の方向性、解釈について弁明するのは前代未聞だ。

 翁長氏の発言のブレは今回だけでない。10月8日に菅義偉官房長官と会談した際、北部訓練場の年内返還を「大変歓迎する」と表明したが、地元マスコミで批判されるや否やすぐに取り消した。菅氏は「知事がヘリパッドを容認した」と明言した。ところが、そのわずか2日後に翁長氏は「発言は不適切だった」と釈明した。

 一般質問では翁長氏の「苦渋の選択」の解釈について質問が集中した。

 翁長氏は「SACO(日米特別行動委員会)合意の着実な実施において、北部訓練場の約4000㌶の返還に異議を唱えることはなかなか難しいということだ」と説明。基地問題の県政を担う状況を「苦渋の選択」と表現したのであり、「決して容認した訳ではない」と弁明した。

 「言っていることがコロコロ変わることから、巷(ちまた)では『カメレオン知事』とか『10枚舌』と言われている」。山川典二県議(自民)の指摘だ。

 また、照屋守之県議(自民)は、オスプレイ用のヘリパッドが建設されることを前提に、北部訓練場は革新の論理に当てはめれば「新基地」だと指摘。その上で、「翁長氏は選挙公約では新基地建設に『反対』と言っている。『容認できない』というのは公約違反ではないか」と問い詰めた。この他、革新系支持母体に対する裏切りだという意見が噴出した。

 ある県幹部は、ヘリパッド移設を「容認できない」とは何度も言っているが、一度も「反対」と言っていないことに真意をくみ取ってほしいと求める。知事支持派で北部訓練場に集まる革新活動家・団体への配慮をにじませた。