大阪府警機動隊員発言で沖縄県議会が抗議決議採択
活動家の暴言は不問に、県民と本土の分断が狙いか
沖縄県の米軍北部訓練場(東村、国頭村)のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)移設工事の警備に当たる大阪府警機動隊員が、工事に反対する活動家に「土人」「シナ人」と発言した問題で、県政の革新系与党は県民の尊厳が傷つけられたと非難した。一方、その前に活動家が機動隊に手を出し、暴言を吐いていることも明らかになった。(那覇支局・豊田 剛)
ヘリパッド移設容認の翁長氏、革新会派との亀裂広がる
沖縄県議会は10月28日、本会議臨時会を開き、賛成多数で県外機動隊による侮辱発言に関する抗議決議および意見書を賛成多数で可決採択した。
「『土人』という言葉は、未開、非文明といった意味の侮蔑的な差別用語であり、『シナ』とは戦前の中国に対する侵略に結び付いて使われていた蔑称である。この発言は、沖縄県民の誇りと尊厳を踏みにじり、県民の心に癒やし難い深い傷を与えた」
提案者で革新系会派「おきなわ」の新垣光栄県議は、沖縄戦における犠牲とその後の米軍占領下の歴史に触れた上で、「沖縄県民は、基地がある故の事件事故に苦しめられ続けてきた。今回の発言は沖縄県民の苦難の歴史を否定し、平和な沖縄を願って歩んできた県民の思いを一瞬のうちに打ち砕いた」と述べた。
ただし、意見書・抗議決議には、共産、社民両会派が主張する「ヘリパッド建設反対」「県外機動隊撤退」という文言は含められなかった。
渡久地修県議(共産)は、「できれば、全会一致で県議会としての意思を示す必要がある」と説明。中立の維新と公明も賛成した。
これに対し、自民党の照屋守之県議は、採択の真の理由を求めた。
「沖縄県警本部長もわびて、警察官は処分をされている。これ以上、何を求めるのか」(照屋氏)
沖縄県警は、19日に発言が事実だと認め、「土人」は不適切な言葉だとの見解を示した上で翁長雄志知事を前に謝罪した。また、大阪府警は21日、刑法第195条(特別公務員暴行陵虐)に抵触したとの理由で発言者の男性巡査部長と男性巡査長を戒告の懲戒処分とすることを決めた。
照屋氏は、「翁長知事も、(北部訓練場の)返還は歓迎している。県民の願いは、現場が混乱することなく基地の返還が行われることだと思う」と述べた上で、与党の発議は「日本国民と沖縄県民を分断させる目的があるのではないか」と問い詰めた。
照屋氏はさらに、「抗議参加者は何をやっても構わない、違法行為は黙認しなさい。そういう立場での提案なのか」と問い掛けた。
与党の意見書・抗議決議が採択された後、自民党案が審議された。
提出者を代表して又吉清義県議は「現場において何が起きているか、全議員の皆さまに真実を伝えたい」と切り出し、反対派による暴言の数々を臨場感豊かに伝えた。
「おまえは心がゆがんでいるから、顔もゆがんでいる」
「米軍の犬、政府の犬、人殺し」
「おまえの顔と家族の顔をネットで世界にアップしてやる」
「八つ裂きにしてやる」
「大阪の人間は金に汚いよね」
「おまえが戦争に行って死ね」
警察官の人権、尊厳を傷つける発言を問題とせず、警察官の発言だけを取り上げることは「あまりに一方的と言わざるを得ない」と指摘。工事現場周辺の秩序を維持し、地域住民の安全を確保するよう要請した。
「土人」とののしられた作家の目取真俊氏はこれまで、「腐りヤマトゥー」(腐った日本人)などと警察官を挑発する発言を繰り返している。また、他の活動家は警察官の帽子やサングラス、マスクを奪い取ったり、押さえつけたりしている場面も目撃されている。
自民党案について比嘉瑞己県議(共産)は、「差別発言をした警察権力を擁護するものとなっている」と批判。採決の結果、同案は賛成少数で否決された。
ヘリパッド移設工事は年内にも終わる見通しで、それに従い北部訓練場の約半分は返還される。これについて翁長氏は菅義偉官房長官との面談で「大いに歓迎する」と述べた。
共産党は、「政府は直ちに大量派遣した県外機動隊員を引き揚げさせ、高江オスプレイパッド建設を断念すべきだと考える」(比嘉氏)と主張する一方で、ヘリパッド移設容認の翁長氏の姿勢については明言を避けた。
ヘリパッド移設問題は、翁長氏と革新会派の間の亀裂を広げるだけでなく、保革を超えた「オール沖縄」の限界を露呈するものとなっている。











