辺野古判決、翁長知事の違法認定は適切だ
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり、埋め立ての承認を取り消した沖縄県の翁長雄志知事を国が訴えた訴訟で、福岡高裁那覇支部は「承認取り消しの撤回に応じないのは違法」との判決を言い渡した。国側の勝訴である。
国の是正指示に従わず
辺野古移設をめぐる国と県との争いで司法判断が下されたのは初めてだ。判決は「普天間の危険を除去するには辺野古での埋め立てを行うしかなく、これにより基地負担が軽減される」との判断を示した。国の主張を全面的に認めた妥当なものだ。
翁長知事側は最初、一地方自治体として辺野古移設の必要性を否認し、埋め立て承認を取り消した。今回の訴訟では「防衛や外交上の政策実現を目的として、国土交通相が指示を行うのは権限を逸脱する」と訴えた。
国交相が承認取り消しの撤回を翁長氏に指示したことは、国交相の所管外であり認められないという主張だ。何が何でも承認取り消しを貫こうとしているのだろう。
われわれがここで認識しなければならないのは、国全体の安全保障の視点で見た普天間飛行場移設計画の意義である。この飛行場の最大の問題点は、周辺住民にとって危険極まりないことだ。
周辺には学校や民家が密集している。万一事故でも起これば大惨事となり、日米同盟関係に致命的な支障を来しかねない脆弱(ぜいじゃく)性を抱えている。
日米両国は2006年、現行の移設計画で合意し、13年12月には仲井真弘多知事(当時)が埋め立て申請を承認した。しかし、翁長氏は14年11月の知事選で「辺野古移設反対」を掲げて圧勝し、15年10月に承認を取り消した。
このため国は県を相手取って訴訟を起こした。今年3月に和解が成立し、和解条項に基づいて国は承認取り消しの撤回を求める是正指示を出した。だが、翁長氏が指示に従わなかったため、国は改めて今回の訴訟を起こさざるを得なかった。
判決は埋め立て承認取り消しについて「日米信頼関係の破壊」といったデメリットを挙げた。その上で「辺野古への移設は沖縄県の基地負担軽減に資するもので、民意に反するとは言えない」と述べた。
さらに「埋め立て承認を取り消すことによる利益が不利益を大きく上回っていない」として、取り消しは「違法だ」とも指摘した。また、翁長氏が国の是正指示に従わないことを違法と認定した。極めて適切な判決として評価される。
沖縄が太平洋戦争での激戦地となり、多大の被害を受けたことをわれわれは忘れてはならない。その上、戦後71年の今も基地負担を強いられている。全国の米軍専用施設の73・8%が国土の0・6%にすぎない沖縄に集中している。
基地負担軽減に役立つ
しかし、中国と北朝鮮の脅威の増大を考えれば、沖縄基地の重要性は一層高まっている。
辺野古移設は住民の基地負担の軽減に役立つものである。政府は住民との対話を重ねるべきである。