沖縄観光コンベンションビューロー 人事、予算管理めぐり問題噴出

今年度、6年ぶり赤字転落に衝撃

 一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の人事や決算をめぐって問題が噴出しているが、従業員からは職場の民主化を求める声が上がっている。さらには、利益誘導やずさんな予算管理の問題も浮かび上がっている。(那覇支局・豊田 剛)

翁長知事抜擢の平良会長/功労者の事務局長を解任 出身企業社長を理事に

沖縄観光コンベンションビューロー 人事、予算管理めぐり問題噴出

沖縄のホテル大手かりゆしが運営するホテルが入っている那覇港に隣接するとまりんビル

 OCVBは県の観光行政を担う外郭団体。2015年度予算は約49億5000万円。赤字計上は09年度以来、6年ぶり。15年度の入域観光客数760万人と過去最高が予想されるなど、観光実績が好調なだけに、赤字転落には衝撃が走った。

 15年度決算については、昨年5月に開かれた予算理事会で、約4300万円の黒字の見込みとなっていた。ところが、2月1日に開いた臨時理事会では、年度決算見通しで約3720万円の赤字が生じる試算を報告した。予想とは約8000万円もの開きがある。

 この指摘を受け、一部の決算を次年度に先送りするなどして、今年度の赤字を約830万円まで圧縮することが分かっている。

 これについて、ビューロー側は、新規採用した職員人件費の計上漏れがあったことを認めた。さらに、嘱託職員の人員増や残業増により人件費が膨れ上がったことや、沖縄コンベンションセンター(宜野湾市)やブセナ海中公園(名護市)の収益の伸び悩み、大型催事のキャンセルが原因と分析した。

 OCVBの混乱は、翁長雄志氏が県知事に就任した約半年後の昨年6月、県内ホテル観光大手のかりゆしグループの平良朝敬前CEOを会長に任命、臨時理事会で承認されたことに端を発する。

 平良氏は会長就任に当たり、かりゆしグループCEOの職を辞したが、オーナーで筆頭株主だ。

 昨年10月、OCVB事務局トップの屋良朝治事務局長が突然、解任された。屋良氏は長年、陰で支えてきた功労者で職員の信頼は厚い。

 OCVB側は、「上司である会長と常務の指示に公然と反発し、社内の秩序と規律を乱す」という理由で自宅待機させた後、参与という形で関連機関の別の事務所に配置換えしたと説明する。

 OCVBの職員は約240人。そのうち、正職員(プロパー)は約18%と少なく、残り8割が嘱託または非常勤の契約社員だ。

 事務局長解任案を知ったOCVB労働組合(喜瀬涼子委員長)は昨年10月19日、解任が職員の労働環境悪化につながるとして環境改善に向けた要求書を会長宛てに提出。OCVBの理事と監事27人にも要望書を送付した。

 要望書では「組織の健全な運営と職場の民主化の復活について」と題するもので、「非民主的な組織運営がもたらしたコミュニケーション及びマネージメント欠如による職場環境悪化」を指摘、「組織の存続そのものが懸念される非常事態との強い危機感を持っている」と訴えた。契約社員らは自らの処遇にも不安を覚えているという。

 「観光に関する深い造詣、業界との信頼関係、そして正社員として積み上げてきたノウハウ」を持つ事務局長の解任は、組織運営に重大な支障を来すことがあると断言。「業務以前の組織運営において、公平・中立性・透明性を欠いている各行動に対し、組合員一同、労働者として多大な不安と恐怖を感じざるを得ない」と訴えた。

 実際、平良氏が会長になって以来、「精神的ダメージを受けた職員が急増している」のが実態だ。業務追加は定款に定められているように理事会で決定したものではなく、組合にも説明はないという。

 2月下旬に行われた県議会一般質問では、花城大輔議員と照屋守之議員(共に自民)がOCVBに関する集中質問を行った。

 花城議員は、「OCVBには利益相反取引の禁止という内規がある」とされているにもかかわらず、平良氏が会長に就任したことを問題視した。OCVBは理事会の定数を2人増やしたが、そのうちの一人は県ホテル協会の當山智士会長でかりゆし社長だ。利益誘導のそしりは免れまい。

 実際、昨年度はかりゆしグループとの取引は12件、合計403万円を支出したことを認めた。また、かりゆしが所有するかんなタラソ・ラグーナ(宜野座村)に助成を行ったことも明らかになっている。県の前田光幸・文化観光スポーツ部長が認めた。

 花城議員はさらに、「事業計画通りに実施せず、計画にないものを行ったのが問題」で、「(平良会長が)就任して以来、会長室の調度品の入れ替えも当初予算に入っていない」と追及。こうした運営を放置してはならないと強調、県が人事にも介入すべきだと訴えた。

 照屋議員は、OCVBの臨時評議員会の議事録の公開を求めたが、前田氏は「評議員会は従前、非公開で行われており、議事録は作成していない」と答弁。照屋氏が、一般財団法人に関する法律の条文を基に「議事録を作成する義務がある」と指摘すると、「要請があれば議事録を作成できる」と言い直した。

 OCVBの数々の疑問をめぐり、県議会は知事の総括質疑で平良氏の参考人招致を求めたが、反対多数で否決された。


一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)

 沖縄観光の強力かつ効率的な推進体制を再構築するため、観光とコンベンション分野を統合一元化し、1996年4月に発足した「官民一体型」の県内唯一の推進母体。 発足以来、多様化する国民の旅行動向や国内外観光先進地との競争などに対応すべく、国内外における誘致宣伝事業の展開および受け入れ体制整備事業の推進や観光・リゾート関連産業の人材育成、多彩なイベントの開催を手掛けている。