辺野古移設、危険除去と抑止力維持に必要


 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、翁長雄志知事は、仲井真弘多前知事による埋め立て承認に「瑕疵がある」として正式に取り消した。

 これに対し、防衛省沖縄防衛局は取り消しが違法だとして、行政不服審査法に基づく審査請求と、裁決が出るまでの取り消しの効力を止める執行停止を国土交通相に申し立てた。国と沖縄が全面的に対立し、法廷闘争が必至の状況となったことは極めて残念である。

 翁長知事が承認取り消し

 辺野古への移設について、われわれが認識しなければならないのは、それが最善の選択であるということだ。普天間飛行場の周辺には学校や民家が密集している。万一事故でも起これば、住民の反米、反基地感情が一挙に爆発し、日米同盟関係に支障を来すことになる。

 一方、中国や北朝鮮の脅威を考えた場合、抑止力を維持するには沖縄に米軍基地が必要だ。米軍の戦略的要請に応えつつ、危険性をできる限り低下させるという点で、普天間から辺野古への米軍基地移設は最も現実的な選択と言える。

 翁長知事は、辺野古移設の「実質的な根拠は乏しい」と主張する。しかし米軍のヘリコプター部隊を県外に移せば、即応力は直ちに低下し、日本を防衛する米軍の抑止力に悪影響を及ぼすことは必至だ。

 われわれが危惧するのは、翁長氏がわが国を取り巻く安全保障環境の厳しさを十分に理解していないように思えることだ。日本全体の安全が確保されてこそ、沖縄の安全も維持されるのではないか。

 もっとも、全国の米軍専用施設面積の73・8%が国土の0・6%にすぎない沖縄県に集中しているのがいびつであることは確かだ。この現実を、われわれは直視しなければならない。しかし、これは中国、韓半島をにらんだ沖縄の地政学上の重要性によるもので、決して差別ではない。

 翁長氏の行動でいま一つ疑問に思えるのは、先月下旬にスイス・ジュネーブでの国連人権理事会で「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」と述べたことだ。同じ日本人として外国に訴えるべきことなのか。

 このような“奇怪な”言動の背景にあるのは、来年沖縄で続く選挙を考えてのしたたかな「計算」ではないだろうか。1月には普天間飛行場を抱える宜野湾市長選、6月には県議選が行われる。そして7月の参院選である。

 翁長氏側は宜野湾市長選では政府寄りの現職に対抗する新人の擁立を主導している。県議選でも勝利して多数派を維持し、参院選では辺野古移設容認派の現職である島尻安伊子沖縄担当相を破ることを目指している。

 しかし選挙に勝つために、国の専権事項である安全保障について「自己決定権」を主張するのは無責任で危険だ。

 基地負担軽減に努めよ

 政府には沖縄県民に配慮して基地負担の軽減に努めるとともに、辺野古移設の必要性についても丁寧な説明を繰り返すことが求められる。

(10月15日付社説)