米国は対中牽制を強めよ


 米オバマ政権が、南シナ海・南沙(英語名スプラトリー)諸島の中国の人工島から12カイリ以内に軍艦を送り込む作戦の是非をめぐり、最終判断に向けた検討に入ったもようだ。

 中国は人工島造成と軍事拠点化を停止すべきだとの米国の再三の要求を受け入れる態度を見せていない。米軍は毅然(きぜん)とした行動を取る局面を迎えたと判断している。

 人工島付近に米艦派遣か

 米海軍は、国際法上認められている公海上の航行の自由と領海の無害通航権を保障する意図で、係争海域を通過する作戦を通常から行っている。これを南シナ海でも実施するという計画である。

 これまで米国防総省、安全保障専門家の多くは、南シナ海における中国の一方的な行動に対し強く出るべきだと主張してきたが、オバマ大統領、ホワイトハウスは地域の緊張の高まりを懸念し、簡単に受け入れてこなかった。中国を挑発するような作戦行動は慎まなければならないという不文律が見え隠れしてきた。

 先月の米中首脳会談では、オバマ大統領が中国による岩礁埋め立てに「懸念」を重ねて表明。これに対し、習近平国家主席は「南シナ海の島は中国固有の領土。領土主権と海洋権益を維持する権利がある」と反論した。中国の手前勝手な主張である。米中間の溝が埋まらなかったことを受け、ホワイトハウスが態度を変える可能性を高めたとしてもおかしくはない。

 国際法では海岸線から12カイリを領海と定めている。米国は、中国造成の七つの人工島を「砂の長城」と呼んで強く批判してきた。だが、米海軍は2012年以後、中国が実効支配する岩礁の12カイリ以内を航行、飛行していない。

 ホワイトハウスや軍部は意図的に情報をリークし、メディアに報道させているのかもしれない。米国では政府関係者によるリークはよくある。問題は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが指摘するように「現政権のリークが当てにならない意思表示である」ことだ。先月の習主席訪米前、米政府が中国発として批判しているサイバー攻撃に対する制裁を検討していると米当局者は記者団に語ったが、制裁は実現しなかった。

 中国の人工島造成は少なくとも13年から始まっている。人工島の一つでは、3000㍍級の滑走路が完成し運用が迫っている。アーネスト米大統領報道官は「今後の政策決定については言えない」と明言を避けた。

 だが、早くからカーター米国防長官はスタッフに対し、人工島上空での米偵察機飛行や、周囲12カイリ内への米艦派遣などについて検討するよう求めている。国際法で認められている場所であれば、どこでも飛行、航行、作戦行動を行うという考えに基づいている。

 オバマ大統領は決断を

 あとはオバマ大統領の決断一つである。中国が領有権を主張し、他国の侵入を拒んでいる人工島を認めず、無力化するために、米国は艦船を航行させる。米国は、中国の強引な海洋進出を容認しないという姿勢をはっきりと示さねばならない。

(10月16日付社説)