川内2号機再稼働、粛々と発送電への作業を
九州電力は、川内原発2号機(鹿児島県薩摩川内市、出力89万㌔㍗)を再稼働させ、核分裂反応が連鎖的に生じる「臨界」に達した。
九電は21日から発電と送電を始める予定で、段階的に出力を上げ、11月中旬の営業運転移行を目指す。
終わりなき安全追求
東京電力福島第1原発事故を教訓に策定された新規制基準に基づく再稼働は、川内原発1号機に続いて全国で2基目だ。1号機では発送電の開始後、出力を上昇させる過程でトラブルが発生。発電用のタービンを回した蒸気を冷やして水に戻す「復水器」で海水の混入が判明し、九電は出力上昇を延期して対応した。2号機についても慎重に作業を進めなければならない。
再稼働は電力の需給のバランスを保ち、電力会社の財務体質を改善して電気料金引き下げに寄与するが、今回の1、2号機の再稼働の意義は、わが国の原発史上大きい。
まず、世界で最も厳しいと言われる新規制基準に合格するため努力し、クリアしたこと。企業の実力の高さを評価したい。また福島第1原発事故後、原発に対する不信感が広がったが、それを克服しての稼働であること。これは企業の努力のほか、地元の人たちが原子力の必要性を理解し、行動で示した結果である。
また国の原子力委員会は、原発開発の初期段階から原子力の平和利用に専念し、安全優先であることを言い続けた。ただ、原発の必要性と安全性について、社会に向かって一方的にPRすることでよしとしてきたきらいがあった。しかし、福島原発事故後に危機感を抱き、社会的批判を受け止めて内部の議論の過程を公開するなど、以前より国民との間で意見交換に努めるようになった。
ほかに、日本で唯一の原子力に関する総合的な研究開発機関である日本原子力研究開発機構が、研究だけでなく、福島原発事故に最優先に対応するなど、“行動する機関”としての評価を得ていることも心強い。
今後とも官民が一体となって原発の安全性確保のため、人材、技術の相互交流や情報交換を図るなど協力し合い、相乗効果を発揮するよう期待したい。再稼働した現場も、ヒューマンエラーをなくすため業務のIT化などにも積極的に取り組むべきだ。また、安全が最優先されるように組織の体質改善にも取り組んでほしい。
安全のためになすべきことに終わりはない。これで大丈夫だと、手を抜いてしまえば、劣化が始まる。災害事故をゼロにすることを目標に安全管理を進めることだ。
他の再稼働も進めよ
一方、川内原発1、2号機に続き、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)や、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)も再稼働が視野に入っている。いずれも新規制基準に適合していると判断されており、四国電、関電の両社は早期の運転再開を目指している。
政府は地元自治体との調整を本格化させ、エネルギー政策の柱である原発再稼働を後押しすべきだ。
(10月17日付社説)