那覇市で沖縄の少年非行を考えるシンポを開催
低年齢化や共犯・再犯率は全国で最悪
沖縄の少年非行の低年齢化と共犯性、再犯性が深刻化する中、法務省九州地方更生保護委員会が沖縄少年院の実態調査を行い、保護者との関係の悪さや学歴が強く相関していることが明らかになった。これを深刻視した関係者はこのほど、「立ち直り支援」や「非行を生まない社会」を目指してシンポジウムを開催。家庭、地域社会、学校、雇用主がそれぞれ居場所づくりや立ち直り支援に目を向けるべきとの意見で一致した。(那覇支局・豊田 剛)
親子関係が「機能不全」
地域での立ち直り支援必要
法務省九州地方更生保護委員会はこのほど、少年院の少年の実態調査の結果を公表した。沖縄少年院を仮退院する46人が対象となった。この中で、少年たちの家庭・地域環境、教育事情、非行に至る経緯が明らかになった。
年齢は14~16歳までの少年が56・6%で全体の半数以上を占めた。また、年少少年(14~15歳)が全国の1・5倍で、低年齢化が際立っている。非行の種類は窃盗が73・9%で最も多く、全国の2倍以上ある。次いで道交法違反8・7%、傷害6・5%と続く。
家族形態では、実母のみが50%を占めて最も多く、実父母家庭は30・5%。「保護者との関係」は、60・8%の少年が敵対反発をし、無視状態が37%と続いた。
保護者と良好な関係にあったのはわずか1人だった。ほとんどの対象少年は親との関係が悪化、少年らの親子関係は「機能不全にある」と分析している。学歴は、中卒が43・3%、中学在学と高校中退はそれぞれ26・1%。全国では高校中退が32・8%と最も多い。
全国との違いが顕著だったのは「生活程度」の項目。沖縄は「貧困家庭」が60・8%で全国の2倍以上だった半面、「普通」は37%で全国の約半数。「裕福」は2%だった。
少年非行に取り組む沖縄県更生保護協会、沖縄県保護司連合会などの関係機関はこの結果を深刻に捉えて11月20日、「沖縄の少年非行を考えるシンポジウム」を那覇市で開催。教職員、保護司、PTAなどが参加した。パネルディスカッションでは、警察、家庭裁判所、少年院、保護観察所の担当者がそれぞれの立場から、少年非行の実態と取り組み、課題について議論した。
沖縄県警察本部少年課少年サポートセンターの新里薫所長は、少年非行で補導された少年は10年前と比べて64%も増加し、全刑法犯に占める少年の割合、共犯率ともに全国ワーストと報告。中でも不良行為のトップを占める深夜徘徊(はいかい)で補導される少年は人口同規模の長崎県の約23倍で、昨年、50回以上補導された少年が108人もいたことを明らかにした。
また、新里所長は「中卒後、就職しないグループに焦点を当てて、立ち直り支援していきたい」と意気込みを語った。
那覇家庭裁判所の安達美弥子主任家庭調査官は「何らかの事件を起こした後、少年院や児童自立支援施設へ送致され保護観察などの保護処分を受けた少年の割合は全国の35%に対し、沖縄は47%と高い。そのうち、少年院に送られる割合も全国と比べて高い」と説明。保護処分を受けても反省の度合いが薄いため、社会に出ても家庭や地域に馴染(なじ)めず、不良グループに戻ってしまうケースが多い現状を憂えた。
今年10月までで65人が沖縄少年院に入所し、昨年同期比で1・5倍という。沖縄少年院の早川圭介統括専門官は、「小学校高学年の時期に中学生に誘われて“初発型非行”(万引きや自転車盗難など容易な犯罪)を始めて不良文化にどっぷりつかってしまうのが典型的なパターン」と説明。その上で、沖縄では再入院する少年の割合が全国と比べて多く、出所後に地域社会や就労先が更生できる環境になっているかが問われると強調した。
那覇保護観察所の城間あけみ統括保護監察官は「更生するには家庭、仕事、相談相手が必要で、更生保護施設など社会復帰に必要な支援を活用してほしい」と訴えた。
質疑応答の時間では、学校関係者から活発な意見が出た。元中学スクールカウンセラーの男性は「教師は不良生徒と関わりたいが関わり方を知らない。子供の自己肯定感が学校教育で育てられていない」という現状を説明し、教師が解決能力を身に付ける必要があると訴えた。
また、元小学校教師の男性は「三つ子の魂、百まで」ということわざを引用し、「教育の原点は家庭にある」と強調。子供が非行に走らないための予防教育を家庭で行う必要性を述べた。











