沖縄知事選告示 県、政府、米の協調守る戦い


 任期満了に伴う沖縄県知事選(11月16日投開票)がきょう告示される。現職で3選を目指す仲井真弘多氏に、革新政党の支援を受ける前那覇市長の翁長雄志氏、元参院議員で前民主党県連代表の喜納昌吉氏、元郵政民営化担当相の下地幹郎氏らが挑む混戦になる。

 最大の争点は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設問題だ。仲井真知事以外は名護市辺野古への移設に反対しており、民主党政権時代の迷走を教訓としない感情的な議論が蒸し返されている。

 同盟深化が問題解決

 沖縄には明治期の琉球処分、太平洋戦争での地上戦、戦後の米国統治などから独特の被害感情がある。日本への復帰は我が国が日米安保条約の改定によって日米同盟を選択した上で実現した。

 このため、沖縄の基地問題は日米安保体制と不可分であるが、冷戦当時から共産主義陣営の影響を受けた左翼運動が進出し、今日に至るまで革新陣営が反米反政府的な言動を繰り返している。知事選では、仲井真知事以外の候補は県民感情を県政批判へと誘導し集票を図ることになろう。

 問題は沖縄県および県民にとって当面する問題の解決に必要な政策は何かであり、どの候補の公約が最善策かだ。

 感情論では混乱が引き起こされることは、民主党政権時代に実証されている。2009年夏の衆院選で当時の鳩山由紀夫代表が普天間飛行場の移設先について「できれば海外、少なくとも県外」と発言し、沖縄は熱狂的な空気に包まれた。仲井真知事も辺野古移設への態度を硬化させた。

 しかし、鳩山内閣は検討を重ねたものの、結局は辺野古移設に回帰した。感情論では政治責任を果たせないことを示した格好だ。

 さらに、沖縄県に属する尖閣諸島沖で中国漁船領海侵犯事件が起こり、中国が露骨に尖閣領有を主張する行動に出てきた。沖縄全体の領有権について論じる中国軍関係者もいる。このような中国の揺さぶりには屈してはならないし、今日の中国による香港の民主派排除の動きを見れば、中国帰属を志向するかのような県内の一部の動きは、まさに自殺行為である。

 米政府は尖閣諸島への日米安保条約の適用を表明し、今春のオバマ大統領来日時の首脳会談でも確認された。それが中国に対する抑止力として働いていることは沖縄県民の安全にも寄与している。

 基地負担など沖縄が抱える問題は、県と政府と米国とが太いパイプを持ち、信頼関係を深めてこそ解決できる。日米外交のギブ・アンド・テイクに沖縄の声を反映できる県知事を選ぶべきだろう。

 「オール沖縄」は欺瞞

 一方、共産党や社民党など革新陣営は安倍政権の集団的自衛権行使を一部容認する閣議決定や、尖閣防衛に有利となる在日米軍のオスプレイ配備に反対する反米反安保運動の一環として沖縄県知事選に臨んでいる。県民よりイデオロギー優先であり、このような陣営が唱える「オール沖縄」は欺瞞(ぎまん)である。

(10月30日付社説)