ウクライナ東西分断の固定化を許すな


 ロシアによるクリミア編入や東部地域での親露派武装勢力との紛争で揺れるウクライナで、最高会議(議会、定数450)選挙が行われ、親欧米派勢力が圧勝した。

 一方、分離独立を掲げる東部の親露派武装勢力が予定する来月2日の選挙について、ロシアが「結果を承認する」と表明した。ウクライナの東西分断が固定化しかねない事態であり、こうしたロシアの態度を容認することはできない。

 親欧米派が議会選勝利

 新党「ポロシェンコ・ブロック」を率いるポロシェンコ大統領は勝利宣言を行い、「(ヤツェニュク首相の新党)『人民戦線』が主要なパートナーだ」と述べた。親欧米派連立政権発足に向け各党との協議を進めており、東部での紛争終結や政治・経済改革を推進する意向だ。

 2004年のオレンジ革命で親欧米派は連立政権を発足させ、ユーシェンコ氏を大統領、ティモシェンコ氏を首相とした。しかし、両氏は激しい主導権争いを繰り広げ国政を混乱させた。国民は幻滅し、10年の大統領選では親露派のヤヌコビッチ氏を当選させた。

 そのヤヌコビッチ政権は腐敗にまみれ、今年2月の政変で親欧米派が政権に返り咲いた。今回の議会選で圧勝した親欧米派は、今度こそ国民の期待を裏切ることなく、団結しなければならない。ポロシェンコ大統領は国民に与えられた議会の強固な基盤を生かし、親露独立派との紛争を解決し、国家分裂の回避に全力を傾けるべきである。

 ウクライナはこれまで痛みの伴う経済・社会制度改革には踏み出さず、産業構造も旧態依然のままだ。エネルギー供給、製品の輸出先もロシアに大きく頼っている。汚職や巨額債務の問題も深刻だ。親欧米派が言葉だけではなく本気で欧州連合(EU)加盟を目指すならば、身を切る改革を推し進めてこれらの問題を解決し、EUが受け入れることのできる国家をつくり上げなくてはならない。

 親露派の後ろ盾となっているロシアは、親欧米派が勝利した今回の議会選結果を受け入れる構えだ。しかし、議会選をボイコットした親露派武装勢力が来月2日に独自に予定する選挙について、これを承認する考えを示したのだ。

 クリミア半島と、東部ドネツク、ルガンスク両州の主要地域では、議会選を行うことができなかった。これらの地域を支配する親露派武装勢力「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」は議会選を「茶番だ」と切り捨てており、独自に指導者と議会議員を選ぶ選挙を行うと表明している。

 ロシアは親露派支配地域の独立は認めない姿勢だが、親露派を支援してきた。その狙いはウクライナの分断状態を固定化することにあり、親露派の選挙結果を承認することで、ウクライナ政府と親露派勢力の対話をさらに困難なものとする構えだ。

 対露経済制裁を強化せよ

 こうしたロシアのやり方を、国際社会は決して認めてはならない。

 ウクライナを支援する一方、対露経済制裁の強化を通じてロシアを牽制(けんせい)すべきである。

(10月31日付社説)