沖縄知事選、討論会で4候補が揃いぶみ

翁長氏の曖昧な政治姿勢が露呈

 11月16日に投開票される沖縄県知事選の立候補予定者4人の顔ぶれと公約がほぼ出揃(でそろ)った。争点の一つである米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への移設については、候補者の主張が明確になっており、「普天間の危険性除去」という移設の原点を公約にしているのは現職の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事(75)だけだ。一方、辺野古移設反対を訴える翁長雄志(おながたけし)前那覇市長(64)は移設反対の具体的な手法や普天間基地の返還方法を示しきれずにいる。(那覇支局・豊田 剛)

仲井真氏、「危険性除去」が原点 / 翁長氏、基地はつくらせない

喜納氏、埋立承認撤回求める / 下地氏、県民投票で是非判断

沖縄知事選、討論会で4候補が揃いぶみ

知事選の候補者討論会で握手を交わす(右から)仲井真氏、喜納氏、下地氏、翁長氏=17日、那覇市内

 日本青年会議所沖縄ブロック協議会(保田盛清士会長)主催の候補予定者討論会が17日、那覇市で開催され、主要予定候補4人が一堂に会して討論会が行われたのは初めてだった。3選を目指す仲井真氏、那覇市長から転身した翁長氏の他は、元郵政民営化担当相の下地幹郎(しもじみきお)氏(53)と元参院議員で前民主党沖縄県連代表の喜納昌吉(きなしょうきち)氏(66)だ。

 討論前半は、経済や社会福祉、教育、観光政策などで各自の政策を主張した。争点の一つである普天間飛行場の辺野古移設問題についても、それぞれ「容認」「反対」「県民投票」「承認撤回」との違いを明確にした。

 最もヒートアップしたのは、互いに質問に答えるクロス討論の場面。政治信条や辺野古移設反対の手法が明確でない翁長氏に質問が集中した。

 仲井真氏が「辺野古は断固反対と言うが、普天間は放置しておくのか」と質問したのに対し、翁長氏は、「普天間はもう賞味期限切れ。万が一、事故が起きた場合、日米同盟が危うく、普天間の固定化はできない」と説明した。

 これを受けて仲井真氏は「そのままでどうにかなるとでも思っているのか。大事故があるまで待とうというのか」と、非現実的な観測しか述べない翁長氏を批判。それに加え、辺野古移設については「新基地建設ではなく代替施設」と説明、「(辺野古移設容認が)基地の統合縮小で負担軽減になる」と訴えた。

 喜納氏が民主党県連代表を除名されてまでも出馬を決意した理由は、翁長氏が辺野古移設に「反対」だけ主張して「埋立承認を撤回」を明記しなかったからだ。クロス討論で喜納氏から「口先だけの反対だけではいけない。自分でリスクを取らないから不満だ」と問い詰められた翁長氏は、「知事選で県民の意思が示されれば、国連、日米両政府に要請に行く。反対はいろいろなやり方がある。撤回と取り消しは選択肢の一つ」と、ここでも曖昧な返答に終始した。

 一方、下地氏は、翁長氏が先頭になって普天間飛行場の県内移設断念や米軍新型輸送機オスプレイ配備撤回などを求めて昨年1月に全市町村長および議長が署名した「建白書」について翁長氏を問い詰めた。下地氏は「建白書の署名は振興策を多く取るために市町村長らに説明してサインさせたのであり、『オール沖縄』は崩壊している」と主張。また、翁長氏に対して「私は保守です。日米安保を認める」と言いながら、「安保破棄中央実行委員会全国代表者会議や共産党の大会に出席している」と、政治信条の矛盾を指摘した。

 さらに、翁長氏の弱点が見え隠れしたのは、翁長氏が仲井真氏に質問した場面だ。翁長氏が、「国は信用できない」と主張、「沖縄はいつも力がなく、約70年間全部外されてきた。沖縄側の権利の主張の手法は自虐的だ」と述べたのに対し、仲井真氏は、「もともと国を信用しない、沖縄は力がないという翁長氏こそ自虐的感覚で交渉力がない」と一蹴。会場からは拍手が湧き起こった。

沖縄知事選、討論会で4候補が揃いぶみ

辺野古移設をめぐる4候補の主張

 翁長氏の政治姿勢の矛盾点や弱点は、知事選と同時に行われる那覇市長選でも表面化してきた。戦後32年続いた革新市政に終止符を打って初めて保守系支持の那覇市長に就任した翁長氏は当時の所信表明で、「市役所は市民に対する最大のサービス産業でなければならない」と、職員の意識改革による市民の市役所への信頼を勝ち取ることを政治スローガンに掲げ、自治労など労組と戦っていたからだ。

 これに対し、仲井真知事の下で副知事を務めた那覇市長選立候補予定者で弁護士の与世田兼稔(よせだかねとし)氏は、「(翁長氏は)任期半ばで市民との約束を反故にして知事選に鞍替えし、しかも、保守中道の路線を捨て、共産党、社民党、社会大衆党と組んだことに疑念を抱く」として「保守中道路線を取り戻す」と立候補を決意。「翁長市長の市政を踏襲」を掲げて出馬表明をした城間幹子副市長に対して、「翁長市長当時の(指定業者選定など)仕事の発注の在り方などで疑念がある」として、那覇市の財政の検証・見直しを誓って選挙戦を戦っている。

 11月16日には、知事選のほか、那覇市長選、名護市・沖縄市・那覇市の県議補欠選挙、那覇市議会補欠選挙が同時に行われる。

 県内41市長村長のうち、31市町村長は仲井真氏支持を表明している。「建白書」にしがみついて翁長氏が主張する「オール沖縄」に対して「もう過去のもの」「非現実的」との声が日ごとに高まっている。

 翁長氏は前回の知事選で仲井真氏の選対本部長を務めて「ポスト仲井真」として当時期待されていた。ところが、那覇市長4期当選した2年ほど前から、「オール沖縄」を掲げて革新陣営の「オスプレイ反対」「辺野古新基地建設反対」の先鋒(せんぽう)に立ち、革新の代弁者と化して反政府の対決姿勢に突進している。有権者は翁長氏の豹変(ひょうへん)ぶり、変節ぶりをどう評価するだろうか。