陸自那覇駐屯地、地元社協とボランティア協定

 陸上自衛隊那覇駐屯地は7日、那覇市社会福祉協議会(以後、社協)とボランティア活動に関する協定を結んだ。地元の社会福祉協議会との連携協定は全国で初めてとなる。貧困家庭の子供や高齢者に対するきめ細やかなサービスを提供したい市社協は、自衛隊のマンパワーに期待を寄せている。(沖縄支局・豊田 剛)


期待される自衛隊のマンパワー、即時対応力で地域貢献へ

陸自那覇駐屯地、地元社協とボランティア協定

調印式後、記念撮影に臨んだ新本博司会長(右から2人目)、嶋本学司令(同3人目)(豊田 剛 撮影)

 社協の事務所で行われた協定調印式には、社協から新本博司会長、那覇駐屯地から嶋本学司令(1佐)、蛯原寛子最先任上級曹長(准陸尉)が参加した。

 協定は締結日の5月7日から年度末の2022年3月31日まで有効。お互いに終了の申し出がない限り、自動延長する。

 新本会長は、「新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、困っている人をいかに支援するかが課題になっている。子供の居場所づくりやひとり暮らしの高齢者の支援に対するニーズが、これまで以上に高まっている」と話す。ボランティアの自衛隊員には、子ども食堂の弁当の配達、子供の見守り、学習支援、高齢者に対しては安否の確認を含めた清掃をお願いするという。

 協定の決め手となったのは「地の利」だ。社協と那覇駐屯地はともに市内南部の小禄地区にあり、お互い車で5分の距離にある。

 これまでボランティア活動を独自で行う隊員も少なくなかった。沖縄の子ども食堂で食事作りのボランティアをしている隊員は、地元の知人に誘われて、子ども食堂を訪れたことがきっかけで活動を始め、米軍からも表彰されている。

 沖縄県は小学校数に対する子ども食堂の割合が全国で最も高い。県子ども未来政策課によると、今年1月時点で県内218カ所の子ども食堂のうち44カ所が一部休止し、弁当や食材配布などを実施している。活動の全面休止は26カ所。109カ所が一部または全面休止だった昨年4月時点と比べて改善してはいるが、まだ1割以上が活動を止めているのが実態だ。

 嶋本司令は、「隊員の多くは大型車両の免許を所有していて、マンパワーがある。クイックレスポンス(即時対応力)で地域に貢献できればいい」と抱負を述べた。

 その上で、「これまでは隊員がボランティア活動をするに当たり、地域の要望の調整で課題があったが、今後は社協から地域に関する情報提供を受けやすくなる」と話した。

沖縄に駐屯してから50年、地域貢献で広がる県民の理解

 市社協によると、最近は新型コロナウイルス感染の影響でボランティアのニーズは高まっているが、ボランティアが不足し、十分な活動ができていなかった。

 こうした状況を見聞きした嶋本司令は3月9日、社協に新本会長を表敬訪問し、意見交換した。マンパワー不足など福祉の現場が抱える問題を聞く中で、駐屯地が何らかの社会貢献ができるのではないかと感じた。

 その3日後に陸上自衛隊第15旅団(那覇)の最先任上級曹長に蛯原氏が就任。そのあいさつで、「私たちが持つ能力で県民の手助けをするなど、強く明るく、県民としっかりした関係を築きたい」と語るなど、地域貢献を活動の大きな柱の一つに据えていた。

 沖縄に自衛隊が駐屯してから今年5月15日で50年目に入る。1972年の沖縄復帰の前後、革新勢力が反自衛隊感情を高め、自衛隊員に対する差別が公然と行われていたが、その後、命懸けの不発弾処理や緊急患者空輸、そして、全国各地での災害・人道支援で、自衛隊に対する県民の理解が広がっている。


=新本博司・那覇市社協会長のコメント要旨=

自衛隊連携でセーフティネット強化

陸自那覇駐屯地、地元社協とボランティア協定

新本博司・那覇市社協会長(豊田 剛 撮影)

 昨年から新型コロナウイルス感染が拡大している影響で日本国内だけでなく、世界中の人々の往来が制限されている。大きなイベントの延期や中止が相次いでいる。こうした中で大きな影響を受けているのは地域の子供たちやお年寄りだ。

 陸上自衛隊が国内の地震などでの自然災害、海難・航空事故など災害派遣の活動をしているのを見てきたが、まさに国民の生命・財産を守ることに寄与している。社協はセーフティネットの最後の砦なので、自衛隊と連携することで、より強化できる。

 防災意識は国民全体で高まっているが、自助共助の精神の下、地域で連携を深める必要がある。少し前、那覇駐屯地から依頼があり、ボランティア連携・協力を進めていくという話でまとまった。

 地域では貧困や孤独など社会福祉課題が山積している。駐屯地にボランティア募集窓口ができ、地域活動に参加してくれることを期待している。

(談)