普天間合意25年、辺野古移設への反対は無責任


 日米両政府による米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の返還合意から今月で25年が経過した。抑止力を維持しつつ地元の基地負担を軽減するには、普天間飛行場の同県名護市辺野古への移設を進める以外にない。

 県が裁判闘争を展開

 沖縄県で1995年9月、米兵による少女暴行事件が発生した。これがきっかけで、日米両政府は96年4月、普天間飛行場を全面返還することで合意。政府と名護市が2006年4月、V字形滑走路を建設する現在の計画で合意した。

 普天間飛行場は住宅密集地に囲まれ、「世界一危険な飛行場」と呼ばれる。04年8月には、隣接する沖縄国際大構内に米軍のヘリコプターが墜落する事故が起きた。辺野古移設を一日も早く実現する必要がある。

 しかし、移設工事はスムーズに進んでいない。09年9月に発足した鳩山由紀夫政権が「最低でも県外移設」を掲げたこともあり、沖縄では辺野古移設への反発が強まった。故翁長雄志前知事や玉城デニー知事は、移設を阻止するために裁判闘争を展開して工事を遅らせた。

 もっとも最高裁は16年12月、県内の基地面積が相当縮小されることなどを考慮し、埋め立てを承認した仲井眞弘多元知事の判断は明らかに妥当性を欠くものではないと判断。承認を取り消した翁長前知事側が敗訴している。最高裁では昨年3月、別の訴訟でも県側が敗訴した。法廷での決着は既に付いていると言える。

 日米両政府は、普天間周辺の危険性除去や米軍の抑止力維持の観点から「辺野古移設が唯一の選択肢」との立場を堅持している。先の日米首脳会談の際に発表された共同声明にも、このことが盛り込まれた。

 中国の覇権主義的な海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発などで、日本や東アジアを取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。

 中国の習近平国家主席は台湾統一に向けて「武力侵攻も辞さない」と明言し、中国が一方的に領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島沖では中国海警船が領海侵入を繰り返している。北朝鮮の金正恩総書記も今年1月の朝鮮労働党大会で核戦力を強化する方針を示した。

 こうした中、米軍の抑止力維持は死活的重要性を有していると言っていい。特に沖縄は朝鮮半島や中国をにらむ戦略的要衝であり、辺野古移設に反対することは極めて無責任だ。

 政府は18年12月、埋め立て海域での土砂投入に踏み切った。その後、埋め立て海域に軟弱地盤が存在していたため、設計変更を県に申請した。当初は「22年度またはその後」とされていた普天間返還時期は30年代以降となる。政府は着実に移設を進める必要がある。

 政府は県民の理解を得よ

 普天間返還が早期に実現していれば、沖縄本島中部の経済開発が格段に進んでいたとの見方もある。一方、辺野古移設は本島北部の振興につながる。

 政府は県民の理解を得られるよう、移設の意義について丁寧に説明すべきだ。県も移設容認に転換し、政府に協力することを求めたい。