大阪ダブル選「維新」包囲網
「公明」に「都構想」決裂経緯 「自由民主」「赤旗」薄い連帯
地域政党・大阪維新の会の大阪府知事・市長の辞職によるダブル首長選は、統一地方選挙の注目対決だ。大阪市を廃止して府に権限を集中させ、東京都・23区のように府と4特別区にしようという「大阪都構想」の実現を目指してダブル選を打った。
きっかけは、昨年12月26日、当時の松井一郎知事(大阪維新の会代表)が、「大阪都構想」の住民投票実施時期をめぐり維新と公明党が密約した合意書を公表したことだった。
「1、平成29年5月議会(大阪府議会、大阪市会)において、特別区設置協議会議案をそれぞれ可決すること。2、上記設置の特別区設置協議会において、慎重かつ丁寧な議論を尽くすことを前提に、今任期中に住民投票を実施すること。以上、合意成立の証として、本書2通を作成し、各1通を保有する。平成29年4月17日」
府議会・市議会で過半数に足りない維新と公明党との水面下の合意で、2017年6月から大阪都構想を議論する法定協議会が再設置された。が、その後の交渉が行き詰まり、「今任期中に住民投票を実施する」合意を維新側が明らかにしたものだ。
これに公明党は反論、公明新聞は「合意書については、互いに公表しない約束だった」「どこまでも『慎重かつ丁寧な議論を尽くすこと』が大前提だ」(12・27)と、府本部代表の佐藤茂樹衆院議員の会見発言を載せた。
また、「これまでの法定協では、公明党がより良いと主張している、(大阪市を残す)総合区案はほとんど議論されていない」(1・10)、「特別区設置には15年間のランニングコストも含めて1500億円を超える財源が必要とされ、住民サービスの低下につながると懸念されている」(1・24)など、維新の「都構想」に異論を唱えている。
合意書公表後、法定協は1月23日、2月22日、今月7日に行われた。7日に維新は11月24日の住民投票実施を明記した工程案を示して採決したが否決。8日に松井知事と吉村洋文市長が辞職した。同紙は佐藤氏の「残り8カ月の任期を投げ出し、職務・職責の放棄ではないか」(3・9)、「ダブル選について『党利党略で全く大義がない』」(3・10)などの発言で批判を強め、敵対姿勢に転じた。
自民党の機関紙「自由民主」(3・26)は「大阪府知事選・大阪市長選で推薦を決定」の記事を載せたが、府知事候補に元府副知事の小西禎一氏、市長候補に元市議の柳本顕氏の擁立を報告したのみ。2月10日の党大会で決定した今年の運動方針に、統一地方選・参院選で「我々は候補者全員の当選を目指す」とあるが、「10の道県知事選挙」「5の政令市長選挙」に含まれぬ想定外の大阪ダブル選。準備不足は否めないだろう。
なお、共産党は反安倍政権の野党共闘を進めているが、大阪ダブル選では自主投票。機関紙「しんぶん赤旗」(3・11)1面では、「維新政治と安倍政治にさよならの連続政治に」と両方批判する見出しで、小池晃書記局長の府議選応援演説を取り上げた。記事では「維新政治を終わらせるため、保守のみなさんを含む広い共同でたたかう」と反維新に重心が寄るものの、「自共」の連帯は薄い。
編集委員 窪田 伸雄