「自由民主」の平成31年新年号 デジタル覇権阻止を争点化へ

統一選・参院選で選対委員長

「自由民主」の平成31年新年号 デジタル覇権阻止を争点化へ

自民党の役員会に臨む安倍晋三総裁(中央)ら=15日午前、東京・永田町の同党本部

 自民党の機関紙「自由民主」1月1・8日合併号は富士山にかかる日の出の写真に「平成31年新春」と白抜き見出しの新年号だ。安倍晋三総裁(首相)の挨拶は、冒頭で「本年は5月1日に歴史的な皇位継承が行われ、新元号がスタートし、新しい時代が始まります。まさに歴史の大きな転換点にあって、日本の次なる時代を皆さまとともに切り拓いていく。その決意を新たにしているところです」と述べている。

 平成時代も最後の年を迎え、同紙最終面には「平成」の歴代党総裁を報道写真の一コマを並べて紹介。最初が昭和の面影残る第12代総裁・竹下登首相で、「ふるさと創生」のスローガンを背景とした写真だ。衆院中選挙区制度下で単独与党だった同党最後の派閥政治の覇者だった。しかし、リクルート事件と消費税導入で行き詰まって退陣し、平成の政治は波乱の幕開けだった。

 続いて、宇野宗佑、海部俊樹、宮澤喜一、河野洋平、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎、谷垣禎一、安倍晋三―の各総裁25代まで続くが、この間、衆院選挙制度が小選挙区比例代表制に変わり、その前後の2回自民党は野党に転落。戦後昭和になかったことだったが、最近はまた“自民1強”になり、政治が目まぐるしく変化した30年の時代を感じる。

 新元号で元年となる今年は夏に参院選がある。平成元年も参院選があった。自民党は竹下内閣退陣後の宇野内閣で戦ったものの大惨敗を喫して、結党後初めて参院で過半数を割った。

 今年の参院選も10月に消費税率引き上げを控えており、また春には統一地方選もある。同紙は「参院選と統一地方選が同じ年に行われる12年に1度の選挙イヤーを迎えるにあたり、わが党の選挙実務を執り仕切る選挙対策委員長である甘利明衆院議員=神奈川13区選出=に新年の抱負や両選挙勝利のポイントなどを聞いた」とのインタビューを2面に掲載し、選挙中心の新年号となった。

 安倍首相は任期を全うすれば戦前戦後通じて日本最長の政権を担うことになるが、同時に“長すぎる”との攻撃材料を野党に与えることにもなる。それを意識してか、甘利氏は、統一地方選、参院選で勝利し、「安倍政権の政権基盤を強化」することが「国内政治のみならず、国際政治でも必須要件」だと強調した。

 その理由について、「世界はデータを制する者が全てを制する『データ主導社会』に突入することで、100年に1度の大変革期を迎えています。この時にわが国と米国とEUが中心となり、データ覇権主義を排した形で、新たに公正・公平で民主的なルールを構築していく必要性に迫られます」と述べ、そのルール作りの調整役として先進7カ国の中でもメルケル独首相を除くと「在任期間が一番長い安倍晋三総理の存在感がかつてないほど高まってい」ると力説する。

 「デジタル覇権主義」といえば中国の動きに懸念が集まっているが、インタビューでは具体的な国名に触れていない。しかし、人口頭脳(AI)、第5世代移動通信システム(5G)開発をめぐる米中のせめぎ合いは、先端技術による社会変革が世界史の流れを左右する可能性から“新冷戦”と称されるほど過熱している。

 同紙で甘利氏は、デジタル覇権で「民主的な統治ルールが崩壊する恐れ」を説き、「安倍総理は、今や世界の命運を握るキーマン」だと述べ、「日本政治の安定が世界の安定」「衆参で安定多数議席を確保」の見出しで、同党への支持を訴えているのである。

編集委員 窪田 伸雄