目黒児童虐待に「国民民主」 緊急法案で野党の存在感

自民は地方議会に質問要請

目黒児童虐待に「国民民主」 緊急法案で野党の存在感

目黒女児虐待事件を受けて児童虐待防止策を牧原秀樹厚生労働副大臣(左から4人目)に要望する女性タレントたち=7月10日、厚労省

 国民民主党の機関紙「国民民主」(7・20)は、1面トップに「解決のための対案 国民民主党が提出した議員立法」として、「現場の声をふまえた法案策定。児童虐待による死亡事件の再発防止のための法案」を「6月26日、野党各会派と共同で衆院に提出した」と報告した。

 東京・目黒の5歳女児を虐待死させた父親と母親が保護責任者遺棄致死容疑で6月6日に逮捕された。悲惨な事件に児童虐待問題に対処を求める世論が再び高まった。政府・与党に先行して存在感を示すのが野党だ。議員立法はその一つの手法だが、「働き方改革」など重要法案を抱えた政府・与党との対決もあり、小回りが利く立場を生かした20日後の緊急提出だった。

 「提出後の記者会見で筆頭提出者の岡本充功衆院議員は、『事件を耳にした時に怒りと悲しみに暮れた。痛ましい案件であり、早急に国会としても調査をし、対策に乗り出すべきと求めてきたが、残念ながら与党にはそれに応じる気配がなかった。そのため、野党共同で香川県に調査に行き、浮き彫りとなった課題を踏まえて今回の法案を策定した』と法案提出に至る経緯を説明した」(同紙)と、与党批判も忘れない。

 同事件では、香川から東京への家族の転居を機に品川の児童相談所(児相)が女児と面会できなかったことや、香川の児相は父親の暴力のため2度も女児を一時保護し、2度目で両親に指導措置を取っていたが、これも転居で解除されたことが問題になった。

 野党法案では、「①児童相談所における児童福祉司の増員②児童相談所相互間の情報共有の促進等③児童虐待相談対応職員の待遇改善――等の改正を行うこととしている」(同紙)。虐待通告は年々増え、児相は手が回らない。香川の児相から直接の要望を受けて、児童福祉司を増員できるように配置基準を改め、政府計画(2019年に3500人)より1200人多く上乗せするとした。「情報共有」も目黒への転居を機に起きた事件からの教訓だ。

 その後、政府は7月20日に児童虐待防止緊急対策を決定し、児童福祉司増員では政府計画を前倒しし、野党案より多い2000人の上乗せ(22年までに)とした。また、移管元の児相は、引き継ぎが完了するまでの間、児童福祉司指導等の援助を解除しないことを原則とすることや、児相が児童に面会できない場合は立ち入り調査を行うことを定めるなど、より踏み込んでいる。

 世論を背景に与野党は競い合う。自民党の機関紙「自由民主」は、「目黒女児虐待事件を受けヒアリング」(7・3)の記事で、6月21日に党虐待等に関する特命委員会を扱ったのをはじめ、「女性局 児童虐待防止へ勉強会」(7・10)、「児童虐待の根絶に向けて関係省庁から聴取」(同特命委、7・17)、「女性局 児童虐待防止 街頭で訴え」(7・17)などの記事を掲載した。親権のさらなる制限、介入だけでなく予防策の必要などが議論されている。

 また、同紙(8・7)1面左下に、「児童虐待防止を推進 地方議員に議会での質問を要請」との囲み記事を載せた。同党虐待等に関する特命委員会が論点項目を整理した質問マニュアルを都道府県連を通じて配布し、地方議会での質疑応答を集約して政府・与党による児童虐待防止策に反映させるという。

 親が親の務めを果たさず加害者となる深刻な虐待だが、ナイーブな子供たちの人生を左右する対処になる。きめ細かい施策の立案に向け、同党には裾野の広い地方組織という強みを生かしてほしい。

編集委員 窪田 伸雄