「前衛」の改憲阻止 森友・加計は“一番の手段”
延々批判続ける野党が劣悪化
5月は憲法記念日の3日を含め、改憲・護憲の舌戦が各地で繰り広げられた。今年は自民党が3月末に憲法改正のたたき台素案をまとめており、護憲派は批判の標的にしたが、言論の府とも称される国会での憲法論議は低調だ。憲法審査会も常設されており、もっと与野党各党の提案や論戦があってよいはずである。
しかし、昨年来、国会では森友・加計学園問題ばかりが焦点になっており、それが改憲阻止の作戦であることを、共産党機関誌「前衛」5月号の特集「安倍改憲に抗する」は隠してない。
「憲法論議をやっているだけではダメなのです。そのこととともに、安倍内閣がいかに劣悪な政権か、こういうダメな政権だけが憲法を変えようとしているということを見せていくことが重要なのではないでしょうか」
このように述べているのは立教大学特任教授・西谷修氏だが、「その意味で森友・加計問題は、一番の肝」と位置づけている。さらに、「そういう攻め方でないとダメなのではないかと思います。最悪の政権だ、こういうやり方をしていたら誰もついてこないというふうにしていかないといけない」と繰り返すほどの念の押しようだ。
改憲阻止のため、選挙に勝ち政権を得た改憲派を「劣悪に見えるよう」に徹する野党の目的を露呈しており、これでは一つの国会を過ぎても二つの国会を過ぎても、「森友・加計」だけが延々と繰り返される。が、裏を返せば“能なし”と映る。だから安倍内閣の支持率は誰もついて来ないほど落ち込まない半面、野党の支持率はほとんど上がらない。それでも、同特集に照らせば改憲阻止の“一番の手段”になる。
最近、政権を“俗悪・劣悪・最悪”に見せる材料は週刊誌。官僚の酒席のセクハラ発言報道で閣僚の辞任を何度も求める野党の言動などだ。一昔前、自民党政権を窮地に追い込む発端は、地検特捜部が動くような政治家とカネの問題だった。攻守一転して、民主党が政権を取るときも同様な一件があり、“検察政局”とも言われた。しかし、週刊誌ネタの政局化は品がないし、野党の力量にも疑問を感じざるを得ない。このような手法で憲法論議を止めるのは論外だ。
また、日本は憲法を変えてはならないと主張する西谷氏は、その理由に国連憲章の「敵国条項」を持ち出し、「結局、戦後の世界秩序は、日本とドイツへの対処ということがあり、ドイツは冷戦下で事情が変わるなかで、日本という非武装の国を一国つくることによって、その方向を決めることになった」「すると、日本の憲法は、けっして一国の問題ではない」「九条を変えるというのは、じつは、そうした戦後の世界の秩序に敵対することになる」などと述べている。
あたかも1945年当時の戦勝国(中でもソ連?)目線で、戦後70年以上も経(た)った21世紀の日本を見ていることに驚きである。このような言説がまかり通るのは占領期の52年で終えるべきだった。講和条約で主権回復し、しかも占領期に制定された現憲法にさえ96条にれっきとした改正手続きを定めてあるのに、これでは日本国民はいまだに自決権がないかのような暴言だ。
46年当時の日本国憲法制定過程の論議で、共産党は「国を守る権利」を主張して反対したはず。革命後の日本を本気で考えていたからであろう。その後、万年野党になると、その“真剣さ”も消えて、少ない議席を守る左翼票の確保しか関心がないのか? 政権に就けない野党の劣悪化である。
編集委員 窪田 伸雄






