改憲を期す「自由民主」 自衛隊明記など素案示す
原案まで険しい合意形成
「今こそ憲法改正の実現を」(見出し)と自民党機関紙「自由民主」(5・15)は、改憲派の集会を1面で扱った。これまで2面か3面の掲載だったが、国会憲法審査会での日程を視野に強く打ち出したとみえる。
「全国各地で憲法改正を訴える集会などが開かれ、わが党から多くの国会議員らが出席した」として、1日の「新しい憲法を制定する推進大会」(新憲法制定議員同盟)、3日の「民間憲法臨調」や「新しい憲法をつくる国民会議」の集会を紹介。これらの集会では、同党がまとめた憲法改正のための4項目の条文イメージ(たたき台素案)が主要テーマの一つになった。
同紙にも載る憲法記念日の党声明で自民党は、たたき台素案を基に「各党や有識者のご意見も踏まえながら、憲法改正原案を策定し、憲法改正の発議を目指し」、国民投票に向けた運動を進める方針を示した。
しかし、憲法改正の道のりは進むほど険しくなる。具体化するにつれて総論賛成各論反対のケースが出て国会発議に必要な3分の2のハードルが高くなるからだ。一方の反対する野党は、いろいろな理由でも反対の一点で共闘しやすい。
たたき台素案は、「①安全保障に関わる自衛隊、②統治機構のあり方に関する緊急事態、③一票の較差と地域の民意反映が問われる合区解消・地方公共団体、④国家百年の計たる教育充実」(党声明より)の4項目だ。
今日、国民の大多数が自衛隊を支持している。①は9条全文を残し、9条の2として自衛隊の保持を明記するものだ。安倍首相は「推進大会」へのビデオメッセージで、「平和主義の基本理念は変わることはないが、憲法にわが国の独立と平和を守る自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打つことは、今を生きる私たちの責務だ」(同紙)と意義を説いた。
反対派は、①に「徴兵制」など「拡大解釈」して反対している。共産党機関紙「前衛」5月号で一橋大学名誉教授の山内敏弘氏は、憲法に自衛隊が明記されれば自衛隊は「憲法的な公共性」を持つから、「公共の福祉」の中に「軍事的公共性」も含めることも可能になって「徴兵制が合憲化される」と批判した。自衛隊違憲論に立った反自衛隊的な主張と言えるが、それより手強(ごわ)いのは、戦後の自民党政権下の政府憲法解釈で築いた自衛隊合憲論による明記不要論だろう。
ともかく、何十年も定着している自衛隊がなぜ存在するのかスッキリする憲法条文があった方がいいに違いない。そのような改正原案の合意形成に期待したい。
編集委員 窪田 伸雄