新潟県知事選挙 野党共闘王国の一角崩れる

原発論戦しても期待されず

新潟県知事選挙 野党共闘王国の一角崩れる

新潟県知事選の候補者の訴えを聞く有権者=9日午後、新潟市東区

 10日投開票の新潟県知事選挙は、自民・公明の与党が支持する花角英世氏(前海上保安庁次長、元副知事)と野党5党が推薦する池田千賀子氏(前県議、元柏崎市議)との対決となり、国会で森友・加計問題の攻防が続く中、有権者の判断が注目された。結果は花角氏54万6670票、池田氏50万9568票、投票率は58・25%(前回53・05%)だった。

 自民党の機関紙「自由民主」(6・19)は、1面左上に「花角氏が激戦を制す」との見出しで掲載。「多くの党役員が現地入り」し「組織固めに全力を挙げ」、花角氏の「行政手腕や国とのパイプが評価され」たと振り返った。

 組織固めは守りの選挙だ。マスコミの森友・加計批判だけでなく、新潟県には柏崎刈羽原発再稼働問題がある。野党系知事だった米山隆一氏のセクハラ辞任による選挙とはいえ、同じ時期、財務事務次官のセクハラがより大きな問題になった。麻生財務相辞任要求など政権への逆風は与党系候補に有利と言えず、野党は新潟で結束した。

 しかし勝った。2月の辺野古米軍飛行場移設の地元、名護市長選勝利の時の1面トップほどではないが、重要な扱いに違いない。

 なぜなら、自民党は新潟で勝てなくなっていた。野党統一候補は2016年参院選で勝利、同年10月の知事選でも米山氏が勝った。圧勝した昨年衆院選でも小選挙区六つのうち一つを立憲民主、三つを旧民進党の無所属が取った。新潟は沖縄に次ぐ野党共闘王国だ。

 民共共闘効果に加えて、以前の保守分裂も大きい。かつての田中角栄元首相の故郷の新潟は強力な自民党地盤だったのが、娘の真紀子氏が公設秘書給与流用疑惑で衆院議員を辞職した後に返り咲き、民主党入りして反自民に転じた。その民主党も何度か分裂・再編を重ね、現時点で自由党、立憲民主党、国民民主党、無所属の会などに散らばった。

 にもかかわらず、みな野党共闘に乗ってくる。このところ、半ば野党統一候補の選挙広報紙と化している共産党の機関紙「しんぶん赤旗」日曜版(6・10)から引用すると、「2日、JR新潟駅前。日本共産党の志位和夫委員長、立憲民主党の枝野幸男、国民民主党の大塚耕平、無所属の会の岡田克也、自由党の小沢一郎の各代表、社民党の又市征治党首が勢ぞろいし、池田候補の必勝を訴えました。6党首・代表の共同演説は初です。選挙戦で池田候補は『原発ゼロの新潟』を掲げ……支持を広げています」という具合だ。

 おまけに、今回の知事選では告示前日の5月23日に、小泉純一郎元首相が反原発講演会で新潟入りし安倍政権を批判、来場した池田氏に“加勢”した。

 その池田氏が敗北し、野党共闘仕掛け人の共産党には不都合だ。機関紙「しんぶん赤旗」(6・12)は、「市民と野党共闘さらに/池田氏が原発論戦をリード/安倍政権追い詰める受け皿を内外に示す」と、負けを感じさせない見出しで共闘維持に努めている。

 その「原発論戦をリード」との強弁は、刈羽原発再稼働に「NHK出口調査でも再稼働反対派73%と圧倒的多数」との数字によるが、ならば強力な追い風だ。そこでの落選では「受け皿」になっていない。

 政権を追い詰める大前提は政権交代への期待だ。だが、「赤旗」が宣伝するとおり共産党がプロデュースした共闘が見え見えな上、6党派代表が街宣カーに立っても身内争いで分裂した張本人たちではバラバラ感を隠せない。

 有権者は躊躇(ちゅうちょ)した。期待されない度合いの方が、森友・加計追及で狙う政権不信、原発アレルギーより新潟で大きくなったのである。

編集委員 窪田 伸雄