IR法案のカジノ論議 本場の対策「公明」が紹介

「自由民主」大阪に強い関心

IR法案のカジノ論議 本場の対策「公明」が紹介

現在、シーザーズ・エンターテイメント社が経営する米ラスベガスのIR、パリスラスベガス(UPI)

 カジノを含む統合型リゾート(IR)の開業が日程に上りつつある。自民党はIR実施法案を17日に了承。公明党は慎重意見から同日了承を見送ったが、法案は近く国会に提出される見込みだ。将来、2兆円産業とも見積もられるカジノに対し、賭博御法度の日本社会では公序良俗に反するイメージがある一方で、地方経済活性化の切り札として期待されてもいる。

 自民党機関紙「自由民主」(4・17)は、1面に「観光立国へさらに前進」の見出しで3日に自公ワーキングチームで合意したIR法案に向けた重点論点を取り上げている。一方、公明党は機関誌「公明」5月号で「ギャンブル依存症対策を考える/効果的なサポートで住みやすい街に」と題する記事を載せた。

 寄稿したのは、カジノの本場、米ネバダ州ラスベガス市の市長を1991年から99年まで務め、現在、カジノホテル企業のシーザーズ・エンターテインメント社で上級副社長を務めるジャン・ジョーンズ・ブラックハースト女史。同社は日本でのIR展開を構想しているが、誌上の肩書きは元ラスベガス市長だ。

 ブラックハースト氏は、「IRの導入が経済成長および雇用機会をもたらすことについては論をまたない」と断言。その収益を「公益」に生かし、市長時代のラスベガスを「住みやすい街」に変えたと前置きした。また、IR論議で必ず指摘されるギャンブル依存症増加の恐れについて、同氏は「日本特有の懸念」であり、この「仮説」は科学的に研究された多くの論文から正しくないと主張。しっかりしたカジノ規制、予防・啓発キャンペーン、患者治療など包括的な対策をとれば「ギャンブル依存症の罹患(りかん)率はむしろ低下する」と訴えた。

 同氏は対策ポイントを、①予防教育・啓発②科学的な研究成果に基づく対策立案③事業者の責任④依存症患者に対する支援強化―と整理。①について「ハウス・アドバンテージ」というカジノ施設側にどの程度有利かを示す指標を、「利用者にはゲーム参加前に、この勝率の具体的な水準を知らせることが重要」と強調している。ハウス・アドバンテージ10%のラスベガスのスロットゲームなら、100ドル使えば手元に90ドル残るといい、「短時間で勝ったとしても、回数を重ねれば勝率は施設に有利になっていき、最終的には必ずハウス・アドバンテージに近づいていく」と具体的だ。

 このため、同氏は「消費した金銭はあくまでも娯楽の対価であり、別の日に『取り戻す』ものではない。これを損失として追いかけることは、最も危険な行動の一つである」と警告した。射幸性の高いカジノを「娯楽」に収め、依存症を防止し、罹患者を減らすためには、政治、事業者、社会教育など重層的な対策が不可欠ということだ。

 「自由民主」は「日本型IRで外国人客誘致」「世界最高水準のカジノ規制」の見出しで扱った同号とは別に、今年は大阪への注目が目立つ。新春号(1・2、9合併号)の筆頭特集に「大阪万博誘致」を扱い、4月24日号では1面で「安倍総裁 統一地方選へ結束強調 大阪府連臨時党員大会」(見出し)という地方の話題を持ってきている。

 法案で最初3カ所とするIRの区域認定の最有力候補地が大阪だ。大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)は万博用地とIR用地が隣接する一大開発地帯。安倍晋三首相が大阪入りして、来年4月統一地方選の大阪府議会・市議会選挙で大阪維新の会を相手に失地回復の檄(げき)を飛ばしており、大阪に強い関心を寄せている。

編集委員 窪田 伸雄