日中協力説く「公」「自」紙、「一帯一路」に慎重であれ
尖閣狙う中国利する恐れ
尖閣接続水域内に潜水艦。中国軍艦も進入――。尖閣諸島をめぐって11日に新たな衝撃が走った。政府は12日、中国の「商」級攻撃型原潜であることを確認し、「新たな形での一方的な現状変更」だと中国側に抗議した。
このタイミングに13日付公明党機関紙「公明新聞」は、「『一帯一路』構想 日中協力し地域の繁栄に貢献を」と題する「主張」を掲載。中国に対し不用心な印象を拭えない。
「今年は、『日中平和友好条約締結』40周年や、公明党創立者の池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長による『日中国交正常化提言』50周年の節を刻む。その意義深い年に、日中友好の新たな一ページを開きたい」
同党は中国への思い入れが強い。しかし、50年前、40年前の米ソ冷戦時代と今日とでは状況が全く違う。かつては経済大国日本が中国の近代化を支援したが、今や経済力をつけた中国が国内総生産(GDP)で日本を抜き、軍拡を加速し、反日をあらわにしている。
また、自民党の機関紙「自由民主」(1・23)も、最終面で昨年12月に北京で行われた自民党、公明党、中国共産党による第7回日中与党交流協議会を「二階俊博幹事長訪中」と題して写真特集した(同紙は昨年8月に行われた第6回日中与党交流協議会を8月29日号に載せ、「一帯一路」構想への協力を具体的に検討することを3党「共同提言」に盛り込んだと報じた)。
昨年、同協議会が再開し、11月にはベトナムでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)期間中に安倍晋三首相と中国の習近平主席が会談している。
こうした背景で公明新聞「主張」は、「(一帯一路の)沿線国ではインフラ投資を中心に中国が絡むプロジェクトが進行している。協議会の共同提言でも、日中両国が地域の繁栄へ向けて、『具体的案件を模索していく』ことが確認された。アジアの旺盛なインフラ需要を取り込むことは、日本にとっても成長を加速させる好機となる」と力説した。
が、そのような投資で中国は、ミャンマーのチャウピュー、スリランカのハンバントタ、パキスタンのジワニ、グワダル、アフリカ東側沿岸国ジプチのジプチ、ギリシャのピレウスなどで港を開発し、海軍基地にもしているのだ。
「一帯一路」構想は、ユーラシア大陸のシルクロード(「一帯」)と西太平洋、インド洋、地中海の海のシルクロード(「一路」)を結ぶ経済圏を形成し、さらには中国中心の新秩序を描くグローバルな経済・安保戦略だ。協力すれば中国のグローバル戦略に乗る。
特に「一路」は中国の海洋進出に他ならない。尖閣沖で繰り返す領海侵犯、南シナ海を「領海」と主張し人工島を築くなど力による制海権の確保の動きは国際法違反で、言語道断だ。
同紙「主張」は慎重論にも触れ、「プロジェクトの透明性や公平性が不安」など日本企業の声を中国側に伝えたという。その上で「懸念の解消」を日中双方に説いているが、中国の覇権主義に加担することに、むしろ慎重であるべきだ。
編集委員 窪田 伸雄