原爆の日の共産系大会、禁止条約で「核の傘」離脱狙う

「赤旗」が仕掛ける亡国世論

禁止条約で「核の傘」離脱狙う

3月27日、ニューヨークの国連本部で開かれた核兵器禁止条約制定に向けた交渉会議で「不参加」を表明する高見沢将林軍縮会議代表部大使(時事)

 日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」紙上では、8月になると広島・長崎の原爆の日を挟んで反核キャンペーンが盛んだ。特に今年は、同党も肩入れした核兵器禁止条約が7月7日に採択され、勢いづいた。

 同条約に、核兵器保有国や核ミサイル開発に勤(いそ)しむ北朝鮮などは加盟しない。よって「禁止」に現実味がないため、米国の核兵器の抑止力に守られている日本やドイツなど主要国も加盟しない。

 しかし、「核兵器禁止」は反戦情緒に共鳴する。今度は「122カ国の賛成」を背景に同条約参加を唱える声が、新たな反核世論になっている。

 同紙6日付1面は、「原水爆禁止世界大会国際会議が宣言」の見出しで、広島市で開催された「原水爆禁止2017年世界大会・国際会議」の「国際会議宣言」を扱った。同大会は、共産党系の原水爆禁止日本協議会(原水協)の運動の一環として、毎年原爆の日に合わせて広島・長崎で行われる。

 宣言では、すべての国が核兵器禁止条約に参加することを訴え、「『核抑止力』を否定した条約に基づき、核保有国には『核抑止力』政策の見直し、同盟国には『核の傘』からの離脱を求めました」と、同紙の記事は強調した。

 同宣言は、北朝鮮の核開発も中止するように求めているが、国外より、直接の批判の標的は条約に参加しない日本政府だ。北朝鮮と違い、自由な我が国では、原爆アレルギーの被爆国感情に訴え、核兵器禁止条約を大義名分に米国の「核の傘」からの離脱、さらに同党の主張する日米安保条約反対、安保法制廃止に向けた情報宣伝ができる。世論を焚(た)き付け、共産党票を増やすつもりだ。

 選挙を意識していることは、同紙1~2面に載る志位和夫委員長の広島での街頭演説記事、「核兵器禁止から廃絶へ禁止条約にサインする政府をつくろう」(見出し)で明らかだ。志位氏は、条約に参加しなかった日本政府を批判し、条約に「サインをしないなら、私たちの手でサインする政府をつくろうではありませんか」と訴えたという。

 ところで、核兵器禁止条約には「核抑止力」論の否定や「核の傘」からの離脱を明記してはいない。しかし、同紙8日付に載る志位氏街頭演説詳報によれば、核兵器について同条約の禁止事項に「使用の威嚇」があることを志位氏は指摘し、「『使用の威嚇』の禁止は、5月に発表された原案にはありませんでした。議論の過程で挿入することが決まりました。とても大切な修正です」と述べ、この修正をもって「『核抑止力』論という核兵器にしがみつく最大の口実を禁止した」との理屈を捻(ひね)り出している。

 「国際会議宣言」はさらに、核兵器禁止の必要ない非核保有国の「核の傘」離脱まで要求を広げ、米国に敵対する共産党の綱領路線を後押しする。

 万が一、このような共産党が政権参加したなら、たちまち日米同盟は消えて中朝の脅威を前に核の傘がなくなる。大坂冬の陣で外堀を埋めた大坂城のように夏の陣の落城となろう。まさに亡国の世論と言ってよい。

編集委員 窪田 伸雄