幹事長が評論家インタビュー
一新を図る「自由民主」/変わるか?政治スタイル
評論家は政治家をインタビューするが、政治家が評論家をインタビューするのはまれだ。自民党の機関紙「自由民主」(7・25)1面では、二階俊博幹事長が政治評論家・森田実氏の表敬訪問を受け、2人の懇談を扱ったが、問いを発するのが二階氏で、答えが森田氏というインタビュー記事である。東京都議選敗退を受け、「…多くの苦難を克服した自民党の歴史を森田氏と振り返った」(リード)ものだ。
記事冒頭で二階氏は、「自民党の現状をどう受けとめますか」と、単刀直入に聞いている。
森田氏は、「逆説的ですが、苦しんでいるときの自民党が一番好きです。大きな困難に直面した時ほど、政権党としての真価が発揮されると思います。自民党には“真実を追求する”保守の精神や寛容の精神を取り戻すなど、『復元力』が存在します」と激励した。
今回も、その「復元力」が発揮されるのか―。評論家としては、現在の逆風の中で都議選に歴史的惨敗を喫した自民党がどのような対応をするかが見物であろう。また、森田氏の「逆境を乗り越えて日本をリードする強さが備わっている政党といえる」との発言から、同紙は記事に「逆境に強い『自民党』」という見出しを取っている。
次に、二階氏の「特にスケールの大きい、印象深い政治家はどなたですか?」の問いに、森田氏は「田中角榮総理、橋本富三郎幹事長」を挙げた。1972年~74年の自民党の総理総裁・幹事長のコンビで、「保守政治家としての何でも飲み込む能力や奥の深さ」を評価した。
また、二階氏が党の長所として①多様性②修正能力の高さ、を挙げると、森田氏は①が「萎縮した時に本当の危機が訪れる」と警告。②については「自民党といえども、人間が組織する集団である以上、油断やおごりが生じることがあります。東京都議選では、厳しい結果が出ましたが、むしろ有権者の声に謙虚に耳を傾け反省すると同時に、この現実を糧として乗り切る意志が大切です」と述べた。
さらに、記事の最後に二階氏から「名言・格言」を求められた森田氏は、「謙虚であることをわきまえている人は、最高の事を企(くわだ)てることが出来る」と、ゲーテの戯曲「ファウスト」の一節を挙げた。マスコミの都議選報道をめぐっては、自民党敗北の要因に安倍政権の政治姿勢への批判が多かったが、これら森田氏の言葉を借りて党内に軌道修正を図ったと言えよう。
3日の内閣改造、党役員人事を受けた同紙8月15・22日付は、1面に安倍晋三総裁の党役員人事を載せた。記事では、「安倍総裁は、臨時総務会で『現在、安倍内閣、自民党に国民の厳しい目が注がれている』と述べた上で、『新たな気持ちで結果を残していくことで、国民の信頼を勝ち取る』と政権与党としての責任を果たす決意を表明した」と、逆風下の人事であることを伝える。
“厳しい目”を意識してか、同紙は「結果本位で、国民の信頼を得る」の見出しで決意表明した。同党・政権のスタイルに変化が現れよう。
編集委員 窪田 伸雄