自民党の都議選大敗 「おごり」で政権失いかねず
野党時代は対話を重視
政権奪還5年目にして選挙で大敗した自民党。森友・加計学園問題、女性議員の暴言・失言など逆風が吹く中で、2日の東京都議会議員選挙は過去最低議席に終わり、地方選ながら次期衆院選に大きく影響すると予想されている。
都議選について自民党の機関紙、4日発行の「自由民主」(7・11)は「『党勢回復に全力を尽くす』」の見出しで、トップ記事ではないものの1面になんとか押し込んだ。記事は「わが党は現有議席の57議席を大きく下回る23議席となり、4年ぶりに都議会第1党の座を奪われた」と敗戦報告。二階俊博幹事長が記者団に語った「都民や国民の皆さまの審判であり、厳粛に受け止め反省すべき点は大いに反省し、これからの党勢回復に全力を尽くしていく」との発言から、再起を期す言葉を見出しに引用した。
また、敗因について「自民党のおごりに対する批判や怒りの表れ」と、下村博文幹事長代理(当時都連会長)が記者団に語った内容を記した。公認候補60人の半分以上の落選で、当選者一覧が狭い紙面に収まる。
「おごり」が国会一強多数のおごりなのか、昨年の都知事選に手を挙げた小池百合子都知事と小池氏を支持した議員らを締め付けた組織的なおごりなのか、凋落(ちょうらく)する野党第一党・民進党を見下してのおごりなのか、分析が急がれよう。
同紙(7・18)からは、7面で扱う識者インタビュー欄で「都民が示した『二元代表制』の民意」と題する、国際医療福祉大学教授・川上和久氏の選挙評を載せた。同記事を紹介するリードでは、「安倍晋三総裁も、政権奪還時の初心に帰り、一致結束して信頼回復に取り組む姿勢を強調した」と書き、総括に資する試みだろう。
が、今回の惨敗は「二元代表制」の地方議会と議院内閣制の国会との違いはあるが、衆院選でこのようなことが起きれば政権交代である。「政権奪還時の初心」とは違う。むしろ政権を失い、野党になり臥薪嘗胆(がしんしょうたん)した時期の心掛けを思い出すべきではないのか。不祥事が目立つ2回生議員は「チルドレン」で、野党時代を知らない。
2009年衆院選で民主党に政権を奪われ、同紙は多くの識者たちから意見・苦言を募った。また、小欄でも10年1月の同党大会前後の同紙を取り上げたが、その中に同党が国民一人ひとりの生の声を聞く運動に「なまごえプロジェクト」と名付けて対話を重視する取り組みがあった。
当時、この運動を率いた党広報本部長が小池百合子氏だったのは、何かの巡り合わせだろうか。聞く耳を持つ野党時代の取り組みと、「おごり」という今回の敗戦の弁との溝は何なのか、見直す必要はあろう。
一方、公明党の機関紙「公明新聞」(7・4)の「主張」は、「各地で苦戦を強いられた」が「最終盤の猛烈な追い上げにより、都議会公明党は1993年以来7回連続の全員当選という快挙を達成することができた」と報告。「小池知事が掲げる都政改革を前に進めるか否かが最大の争点」の選挙に勝利したことを強調した。
編集委員 窪田 伸雄






