自民党惨敗叫ぶ「赤旗」 保守分裂に便乗した共産

「野党共闘」枠の票吸収

 東京都議選で議席を17議席から19議席に増やした日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」(7・3)は、「共産勝利 自民歴史的惨敗」と紙幅横いっぱいの白抜き見出しを打ち、まるで共産党政権が誕生したかのような扱いだ。

 一方で、勝利した知事与党、都民ファーストの会と公明党については選挙結果の事実報道にとどめた。これまで共産党は自民、公明に次ぐ都議会3番目の勢力だったのが、都民ファーストの会の出現で4番目に落ちた側面もある。それらは眼中に全くないほど、自民党惨敗の喜びが強かったに違いない。

 例えば同紙(7・4)2面だけでも首相批判の見出しが繰り返し載っている。「主張」で「都議選審判 安倍暴走への深い怒り示した」、小池書記局長会見記事で「安倍政権への国民の怒りが爆発的に示された」、さらに「『一強』崩壊が始まった」「安倍政治への対抗軸を 野党と市民の共闘急ぐとき」との署名記事などだ。

 共産党が「野党と市民の共闘」と述べるのは、国会での民進、共産、社民、自由の4野党とデモ隊との共闘のことだ。一昨年の安保法制反対以来の運動で、憲法改正反対、「テロ準備罪」(共謀罪)反対などが主な活動になっている。

 が、「野党と市民の共闘」のくくりで都議選を見ると、民進党の得票・議席が減り、共産党が増えただけで、両党合わせると、あまり変わらない。パイの奪い合いで共産党が多く取っただけだ。

 改選前の民進7議席、共産17議席の合わせて24議席が、今回、民進5議席、共産19議席で同じ24議席。同紙(7・4)が示す得票率(公認を立てた選挙区での比較)でみても、得票率は前回、共産13・56%、民主13・08%で計26・64%、今回、共産14・73%、民進10・23%で計24・96%だ。同紙(7・3)がトップ記事リードで「史上初めて町田市(議席4)で議席を獲得」と書いた同選挙区で次点に泣いたのは民進党現職だった。

 しかし、自民党が惨敗したのは事実だ。その最大要因は国会で野党共闘する4党とは別に都民ファーストの会が結党したためだ。共産党は、保守分裂で都議会自民党は後退を余儀なくされる状況を最大限、安倍晋三首相に責任の矛先を向ける好機として情宣した。

 今回の都議選の手応えの違いを、同紙(7・4)に載る志位和夫委員長が都議選結果を受けた3日未明に党本部で行った記者会見の記事は伝えている。「私の実感で言いますと、安倍政権になって秘密保護法を強行し、安保法制=戦争法を強行しました。この時も非常に強い怒りがひろがって、内閣支持率もドンと下がったんですけども、今回は、そうした安倍政権のすすめる政策に対する批判だけでなく、安倍首相の政治姿勢に対する怒りが深い…」。

 国に必要な法制度でも、共産党は綱領で敵視する米国との同盟強化になるとみれば反対する。ただ、必要な法は説明すれば理解が広がる。政権批判票の殆どは都民ファーストの会が吸収した選挙結果だが、自ら鬼の首を取ったような共産党の口上は続きそうだ。

編集委員 窪田 伸雄