「公明」の「分権」特集 改憲前提の佐々木氏論文

「日本型州構想」を紹介

 公明党の機関誌「公明」8月号は、「分権改革と地方創生・地域づくり」を特集し、地方行政問題に焦点を当てた。その巻頭論文に中央大学教授・佐々木信夫氏の「地方創生の切り札は『日本型州構想』の実現だ」を載せている。

 佐々木氏の論文は冒頭で「最近、憲法改正の論議が高まっている。とくに防衛や教育、人権の問題と並んで『地方自治』を強める観点からの改正論議が多い」と書き出し、同氏自身が4月20日の衆院憲法審査会で参考人として改憲の諸論点・追加すべき事項について意見を述べたことを紹介した。

 「道州制」論議は憲法改正を前提とした議論であり、この時期、公明党が取り上げたのは興味深い。

 それは、安倍晋三首相が、憲法記念日(5月3日)に向けて9条に自衛隊を明記することを提案し、2020年の憲法改正実現を訴えているからだ。首相提案に「加憲」を掲げる公明党から「われわれの考え方に近い」(遠山清彦党憲法調査会事務局長)との反応はあったが、意気投合とはいかないようだ。また、「国防軍」明記の「日本国憲法改正草案」を発表している自民党の党内には疑問の声もある。

 その後、7月2日の都議選で自民党が敗北、公明党が完勝し、内閣支持率低下とともに首相の影響力の低下も否めない。

 一方、これまで国会の憲法審査会での優先検討事項として自民党から挙がっている緊急事態条項については、公明党は否定的だ。東日本大震災では被災地の統一地方選が延期された。国会議員は憲法で任期が定められている。が、公明党は衆院選が巨大災害などで延期されても、憲法54条の参院緊急集会で対処できるとして、国会議員任期延長の緊急規定を設ける改憲の必要はないとの立場だ。

 この状況から、改憲論議で「道州制」が注目される可能性がある。秋以降、自民、公明、日本維新の会などの協議で改憲原案のための協議を進める方向だが、「道州制」について自民党の改憲案は「広域地方自治体」と書いて可能性を持たせており、維新は党綱領に掲げている。

 佐々木氏の「日本型州」は「道」を採用せず「州」で呼称を統一し北海道も「北海道州」、「九州」は「九州州」にする立場だ。人口1000万人単位に10州と東京、大阪の2都州の「新たな国づくり」を構想している。背景は、少子化による人口減少問題、財政問題、明治以来の中央集権体制の確立のための47都道府県は人口が偏って歪になったことなどだ。

 同氏は「州政府」に「地域主権」、「自己決定・自己責任・自己負担の原則」を強調。一方で「沖縄に『特例型』を認めるのか」と、検討事項を挙げた。東京新聞(4・21)によれば佐々木氏は衆院憲法審査会で「沖縄を独立した州とし、知事を沖縄担当相とすることで国政に意見を反映させることを提案した」という。沖縄への自治権問題は共産党の委員が質問した。

 「地域主権」や沖縄への分権には民進党や共産党も関心を示すだろう。が、一方で分権を強化する道州制導入の憲法改正には、同時に領土領海を含め日本のなんたるかを示す改憲とセットにするべきである。

編集委員 窪田 伸雄