憲法70年と各党機関紙


主張控えた「自由民主」、公明の「加憲」は自民と開き

憲法70年と各党機関紙

「新しい憲法を制定する推進大会」であいさつする安倍晋三首相=1日午後、東京都千代田区の憲政記念館

 日本国憲法施行70年の節目を5月3日に迎え、安倍晋三首相が改憲派集会にビデオメッセージを寄せ、9条に新たな条文を加えて「自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置付けるべきだ」と訴えた。自民党総裁として読売新聞3日付インタビューにもそう答えて、憲法改正の決意を示した。

 が、各党機関紙をみると改憲は五里霧中だ。自民党の機関紙「自由民主」は、5月16日号3面左下に「新しい憲法を制定する推進大会」の記事だけでおとなしい。同大会は超党派の「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)の開催で、「安倍晋三総裁(総理)」の来賓あいさつなどを報じた。

 国会憲法審査会での合意形成のため、自民党は「日本国憲法改正草案」はじめ党の主張を控えている。しかも、冒頭の首相の意向を受けて憲法審査会に提案する案をこれから策定する。

 自民党と連立を組む公明党の機関紙「公明」は、3日に同党が全国で行った街頭演説を扱い、「国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義の憲法3原理を堅持」(5・4)するとともに「必要に応じて新たな条項を付け加える『加憲』の立場」(同)を訴えた。

 また同紙は、3日放送のNHK「憲法記念日特集」に出演した北側一雄副代表・党憲法調査会長の発言要旨を掲載したが、安倍首相が読売紙上で言及した改憲項目に関連し、「(9条の1項、2項を維持した上で憲法に規定のない)自衛隊の存在と役割を明記すべきとの意見があるが、自衛隊が憲法違反だと言っている国民は極めて少数だ。自衛隊に対する評価は大変高いわけで、今すぐ取り上げるべき問題かどうかは検討の余地がある」と慎重だ。

 また、自民党が優先的な改憲項目に挙げる緊急事態条項については、「あえて憲法に規定する必要はない」と否定し、自衛隊、緊急事態とも「加憲」しそうもなく自民党と開きがある。創価学会を地盤に護憲野党から発足した経緯もあるが、与党経験も長い。国の基本である国防を担う自衛隊を憲法に明記するなど理解が欲しいところだ。

 「公明」紙上で「自衛隊が憲法違反だと言っている国民は極めて少数」と批判された勢力で主要な位置を占める共産党は、「志位和夫委員長を本部長とする『憲法9条改悪阻止闘争本部』を党内に設置」したと機関紙「しんぶん赤旗」(5・16)で報じた。同紙は4日付1面で3日の護憲派の憲法集会を扱った後、「首相の9条改憲発言/無制限に海外派兵へ/BS番組 小池書記局長が批判」(5・5)、「9条2項の死文化、無制限の海外の武力行使に道を開く/志位委員長が会見」(5・12)などトップで展開。

 しかし、「2項死文化」には自衛隊発足の時から「違憲解消」を唱えて反対してきたはずで、これが支持されなくなったとみると「無制限に海外派兵」のレッテル張りをしている。

 ただ、改憲反対に運動態勢のある共産党などに比べ、自民ほか衆参3分の2の各党勢力の間で改憲に議論が噛(か)み合わない状況は憂慮せざるを得ない。

編集委員 窪田 伸雄