中国によるガス田開発を憂慮
東シナ海危惧する「自由民主」 仲裁裁判所に提訴促す
中国による東シナ海でのガス田開発に対して、自民党は国際仲裁裁判所への提訴を含めた強い対応を取るように政府に働き掛けた。同党の資源・エネルギー戦略調査会、外交部会、経済産業部会、外交・経済連携本部、領土に関する特命委員会が決議文を通して3月30日に安倍晋三首相に要請したもので、同党機関紙「自由民主」4月11日号が報じた。
記事によれば「ガス油田の開発をめぐり、日中両国は平成20年6月、境界が画定するまでの間、双方の法的立場を損なうことなく、共同開発に向けて協議を行うことで合意したが、22年7月の初会合以降、協議は途絶えている。その間、中国は一方的に開発を進めており」、「国際仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)への提訴を含むさらなる強い措置に向け準備を行うよう促した」という。
東シナ海は日本の排他的経済水域(EEZ)と中国の排他的経済水域が重なり、境界が確定されていない。日本が主張する境界は日中中間線だが、中国が主張するのは大陸棚の延長する沖縄トラフまでで、尖閣諸島を越えて奄美、沖縄、石垣島など西南諸島の近くに大きく張り出してくる。
ガス田をめぐる「日中合意」は福田康夫内閣当時(2008年6月)になされたもので、中国は北京五輪開催を前に国際社会を気にする空気があった。当時の合意ではEEZの境界画定を棚上げし、日本が中国の開発するガス田に出資することで共同開発とする方向だった。協議が途絶えた10年7月は菅直人内閣時代で、同年9月には中国漁船の尖閣諸島沖領海侵犯事件が起き、日中関係は厳しくなった。
一方、南シナ海では中国が沿岸諸国の主張を無視し、南シナ海のほとんどの海域を占める「九段線」を設定して自国の海域と主張、域内の島嶼(とうしょ)の不法占拠、埋め立て、軍事拠点化を進めるなど力による現状変更を露骨に行っている。
中国の領土拡張はサラミ・スライス戦略と呼ばれ、僅(わず)かな隙に入り込みながら既成事実を積み重ねて権利を主張し、やがて力づくの行動を取る。東シナ海の日中中間線付近にガス田を林立させていることは、尖閣諸島の領有と沖縄トラフまでをEEZとしようとする野心の表れと考えられる。
外務省は昨年10月に中国が開発しているガス田の写真をホームページで公開した。「自由民主」4月18日号では、同党の原田義昭・東シナ海資源開発に関する委員長が、「今や17基の掘削施設(プラットフォーム)が確認されており、それらは稼働フレア(炎)も吐いています。そして軍事転用も強く懸念されています。我が国は国連海洋法条約に基づき、領海基線から200カイリまでの権限を有しており、国家主権の侵害が常態化されているわけですから、我が国としての対応を根本から見直さなければなりません」と語っている。
南シナ海をめぐるフィリピンの提訴では、中国が主張する「九段線」は法的根拠を有しないとの国際仲裁裁判所の判決が出た。「『法の支配』の下で主張すべきは主張」(原田氏)することはもっともなことで、筋を通す必要がある。
編集委員 窪田 伸雄