「都議選前」を小池百合子都知事に要望

豊洲「判断」促す公明 “劇場効果”続くかは微妙

 公明党は東京都議選を小池百合子都知事との選挙協力で乗り切ろうとしている。同党機関誌「公明」5月号は「上げ潮の党勢のままに首都決戦の完勝を」と題し、井上義久幹事長インタビューを載せた。都民ファーストの会との選挙協力について井上氏は、「知事側から政策実現のため、都議選で公明党を応援したいという意向も伝えられたため、3月10日に……35項目で政策合意に達し、13日に選挙協力も決めた」と述べている。23人の候補予定者と小池知事との写真も載せた。

 井上氏はまた、都議選は「投票率が上がり、当選ラインも上昇するのは必至だろう」と分析。昨年7月の東京都知事選で小池知事を当選させた「都民の問題意識のうねりは、今も続いており、都政への関心は非常に高まっている。それゆえに都議選に対する関心も、かつてないほど高い」と見るからだ。

 このため、小池知事の人気に乗って得票の上乗せを図ろうと、都議会自民党と手を切り小池新党・都民ファーストの会との選挙協力を選んだ。同誌で井上氏は「これはあくまで都議会固有の判断である。国政での自公連立政権が揺らぐことはない」としている。

 ただ、小池知事の勢いは頭打ちになる可能性がある。敵役にされた都議会自民党だが、ドンと言われた内田茂都議は不出馬、豊洲問題をめぐる百条委員会で石原慎太郎元知事の証人喚問も終わった。“仇(あだ)討ち相手”がいなくなり劇場効果が薄れてきた。

 石原氏は百条委員会で、築地から豊洲への移転推進派として「科学」を根拠に「安全」を訴えて豊洲市場への移転を勧めた。今度は小池知事が市場移転をどうするかの「総合的判断」に注目が集まっている。

 これについて、公明党の機関紙「公明新聞」4月3日付(ネット版)は、「都議会公明党 東村くにひろ幹事長に聞く」のインタビュー記事で、小池知事に豊洲市場移転の「総合的判断」を都議選前に行うように求めた。

 東村幹事長はインタビューの中で築地市場再整備が困難であること、豊洲市場を移転先に選んだ理由を挙げ、小池知事の豊洲市場への移転に向けたロードマップ(工程表)についても「公明党は知事に対し、スピード感を持ってロードマップの着実かつ確実な推進を要望」していることを報告している。

 一方、自民党の機関紙「自由民主」4月11日号東京都版は、「6月23日告示都議会選挙 オール自民で戦い抜く」の記事の中で、「築地市場の豊洲移転に関する判断を先送りしている小池知事の姿勢について『いつまでも豊洲問題により都政が停滞し、2020東京五輪・パラリンピックが成功しないとすれば大問題だ。小池劇場に翻弄(ほんろう)されることなく、あるべき都政を求めていかなければならない』」と、下村博文都連会長の発言を通して批判している。

 都政では小池知事に対して自民、公明は温度差はあるものの「総合的判断」の先延ばしには共に否定的だ。小池氏の判断には豊洲移転か築地再整備かの二つの難しい選択肢しかないが、民意を問うため選挙前に判断を示すべきだろう。

編集委員 窪田 伸雄