「核兵器禁止条約」交渉を絶賛

「赤旗」の国連誇大報道 日米反対し志位氏ら独壇場

 日本共産党は、3月下旬にニューヨークの国連本部で行われた核兵器を法的に禁止する条約の制定に向けた初の交渉会議に志位和夫委員長をはじめとする党代表団を派遣し、機関紙「しんぶん赤旗」で3月末から4月上旬にかけて誇大なキャンペーンを張った。

 同紙3月29日付1面は「核兵器禁止条約実現へ歴史的な国連会議始まる」の大見出しで扱い、「国連を舞台に『核兵器のない世界』めざす本流と逆流の姿が鮮明になりました」と述べるなど、数の上で少数派の核保有国に対して多数派の側に立つ自信を示している。

 確かに「核兵器を法的に禁止する」ことは聞こえは良いが、実際は絵に描いた餅だ。この「核兵器禁止条約」を目指す交渉には、米国、ロシア、中国、英国、仏国など核保有国の常任理事国ならびにインドなど核保有国、また、冷戦時代から欧州正面、極東正面で米国の核の傘に守られてきた日本、ドイツ、韓国などは交渉に参加しない。つまり、実現できない。

 ヘイリー米国連大使は北大西洋条約機構(NATO)加盟国など約20カ国の代表と共に声明を発表し、交渉に反対した。日本政府の高見沢将林軍縮会議代表部大使は「国際社会の分断を一層深め、核兵器のない世界を遠ざける」と交渉に不参加を表明した。

 それでも、共産党は「赤旗」を通して最大限の宣伝効果を上げようと躍起だ。国連での交渉開始という時勢に乗って運動を進めるカードを得たことは否めず、今後の反米反核運動に影響する可能性がある。

 同紙4月9日付に掲載された志位和夫委員長の報告「『核兵器禁止条約の国連会議』に参加して」はブランケット判の紙面で4〓の長文で、同党の入れ込みようが尋常でないことがうかがわれる。共産党の狙いは交渉に反対した米国を批判し、交渉に参加しなかった日本政府をもまた批判し、日米が反対する中で独壇場を得たところで「核兵器禁止条約」を推進する日本の政党として自らの“手柄”を吹聴することだろう。

 しかし、同報告には、この時期に緊張高まる北朝鮮の核兵器開発、弾道ミサイル発射などに言及がない。ヘイリー国連大使は「北朝鮮がこの条約に同意すると思うか」と疑問を呈している。全くその通りだ。

 北朝鮮は一連のミサイル実験に際して在日米軍を標的にすると明言している。日本が攻撃されるということであり、トランプ政権は日韓など同盟国に対して「あらゆる選択肢」をテーブルに置くと確約しており、その中から核攻撃を排除しないことが抑止効果を高めることになる。

 わが国の反核運動は戦後左翼運動が主導してきており、米国の核兵器に反対する反米運動と一体となってきた。わが国と敵対する国の核の脅威を除去する効力のない「核兵器禁止条約」を叫ぶ共産党のキャンペーンは、言論の自由のある民主主義諸国の中で核抑止力の必要を説く抑止論を妨害する非現実的な世論にしかならないのである。

編集委員 窪田 伸雄